小野隆生の「断片」をめぐって
その5.ピストル―――遠い昔の拾い物
小野隆生 ピストルというイメージから、人はさまざまなことを連想します。画家がイタリアに住んでいるということで、マフィアに結びつけることも可能です。
 画家自身はピストルを持っていません。射撃の趣味もないようです。前回の「傘」のように、散歩の途中の拾い物でももちろんありません。こんな物騒なものが路上に落ちていたら大変です。
 では、画家は何故ピストルを描いたのでしょう。それは少年の頃のイコノグラフィーと重なってくると彼は言います。画家は岩手県水沢で生まれ育ちました。子供の頃に流行っていたもの、それがピストルでした。他の男の子と同じように彼もピストルに夢中になったそうです。どんな種類があるのかを調べたり、また西部劇に出て来るピストルにも強く惹かれたそうです。そのときの体験と記憶が、長い年月を経て、今ここに「断片」として姿を現したといえるのではないでしょうか。それは、遠い昔の「拾い物」なのです。
 (2008年7月21日 いけがみちかこ)

*掲載図版は小野隆生断片98-T池田20世紀美術館カタログno.31
1998年 テンペラ・板 56.9×80.1cm

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