小野隆生の「断片」をめぐって 第7回〜池上ちかこのエッセイ

小野隆生の「断片」をめぐって
その7. フルーツ―――絵画からの拾い物
小野隆生98-]\ 
 このフルーツを描いた作品は、他の小野隆生の「断片」と比べてちょっと異質な感じがします。その理由の一つが、くっきりとした陰影です。そしてもう一つは、靴、帽子、傘、ピストルといった、通常は絵画の主題とはなり得ないモチーフに対して、フルーツは明らかに静物画の王道ともいえるものだからです。
 この作品を見て、まず連想したのはアンディ・ウォーホルの、カラフルな花が画面に4つ配された、あの有名な「花」のシリーズでした。4つという数、それにポップな雰囲気がそう思わせたのでしょう。
 果物が描かれた静物画という観点からこの作品を眺めてみると、カラヴァッジョやシャルダンの絵の中から抜け出して来たような印象も受けます。
 洋梨が四つ、肩を寄せ合うように並んでいる。その様子は人間のようでもあります。
そう考えると、今度はモランディの静物画との共通点が見えてきました。モランディの絵の中の、形の異なる花瓶や水指しが整然と置かれた様はときおり家族の肖像を思わせるからです。
 さまざまな絵画を連想させるフルーツの「断片」。思うに、これは過去の画家たちが残した絵画からの「拾い物」ではないかと。
 (2008年8月5日 いけがみちかこ)

*掲載図版は小野隆生断片98-]\池田20世紀美術館カタログno.34
1998年 テンペラ・板 57.5×66.5cm


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