2000年4月〜6月の展覧会

 [ 駒 井 哲 郎 展 − 生 誕 8 0 年 ]

会期…………2000年 4月21日(金)〜 5月20日(土)

概要…………日本人の美意識に潜む叙情を「白と黒の世界」に謳いあげた銅版画の詩人、駒井哲郎(1920〜1976)は、現代版画のパイオニアとして、銅版画の表現や技術に対し、過酷なまでに自らを追い詰め、制作し続けた作家です。モノクロームの世界に、抑制をきかせつつ、それでいて豊潤な情感を作品に織り込む。美術家と文学者の協働からなる挿画本などブック・ワークにも精力的に挑み、わが国に銅版画の魅力を知らしめた第一人者でした。

このたび生誕80年を記念し、『記号の静物』『月の兎』『人形と小動物』『夜の中の女』(以上1951年)、『詩画集 マルドロオルの歌』(1952年)、『教会の横』(1955年)など、初期代表作など30点を集め駒井哲郎展を開催します。
◆駒井哲郎(こまい てつろう)………1920年東京日本橋生まれ。34年慶応普通部に在学中、西田武雄の「エッチング」誌で初めて銅版画を知り、西田主宰の日本エッチング研究所に通う。42年東京 美術学校、43年東京外国語学校を卒業。戦後、春陽会と日本版画協会を舞台に「束の間の幻影」など独特の感性に溢れた銅版画を出品、注目を集め、51年の第1回サンパウロ・ビエンナーレで受賞、一躍戦後美術界のスタ−となる。以後多数の国際展に出品。72年東京芸術大学教授となるが、76年、56歳の若さで没した。


『記号の静物』

[ O J U N ・ 舟 越 直 木 展 ]  

会期…………2000年 6月 6日(火)〜 6月17日(土)

概要…………ときの忘れものが、21世紀を担う現代作家であると期待している気鋭の作家、O JUNと舟越直木の2人展を開催いたします。共に1950年代に生まれ、80年代から個展等で発表をつづけ、それぞれの手法でその世界をかたちにすることに貪欲に、着実に取り組んできました。

 O JUNは、人物や日常的なモチーフから創作した事象を、白い紙面上にポーンと投げ出したかのような、ドローイングを中心に発表しています。小さな頃から背景を描かなかったという、白いままの背景は、観ている者の心を見透かすかのように、あっけらかんとした、それでいて力強い空間を存在させています。

 舟越直木は、初期の平面作品から、1980年代中頃より彫刻へと展開しており、近年はブロンズによる立体を中心に、またその過程において描かれたドローイングを発表しています。ブロンズの硬質さを越えて宿る生命力、あるいは生存力とでも言えるような、強い意志の力を感じる作品群です。「どんな時代のどんな作品も主題というものは作品にとって口実に過ぎない。ただそこには、ある意志−ある方向性をもった力−が存在するだけだ」と記す舟越は、作品が声として存在しはじめるときがあるといい、自分はその声に対する耳であり、その声が発する言葉を存在させることだけを思い続けている作家であるといえます。

O JUN『EL DRADO』 2000年 紙に鉛筆 47×50cm (紙)    

舟越直木『SLUUD』 2000年 臘(出品時はブロンズ) 12×10×8cm  

新作を制作中のふたりが今回の2人展に寄せる思いを書いています。

◆O JUNからのメッセ−ジ

 頭の中にある「もの」を精確に絵や彫刻という「事」にすることは芸術家は魔法使いではないので無理なので、作家が自分の作品について―心のままに云々―と言うのは大概嘘っぱちです。内なるものは“片付かない気持ち”のまま内になって、生涯日の目をみることはありません。それは『真実』と云うものだからで、真実は如何なる形や色彩、物質にもならずどうにも片付かないものなのです。それが言葉なり何かのかたちで自分の外に出てしまうと今度は“事実”になります。

 作家とは、その事実を作品世界と云う虚構(現実)のなかで生かす術を心得ている人のことです。真実と事実の間には千里の距離がありますが、ただ希に、作家が作ったものが誰かの頭に貼りついたり胸に沈むということがあります。そしてそれがその人の『真実』になることもあります。それは芸術の不思議と言うより“人の不思議”だと思います。  2000.3.10 O JUN


O JUN『EL DRADO』

◆舟越直木からのメッセ−ジ
 今回のO-Junとの二人展に出品する作品は蝋型鋳造によるブロンズ彫刻にしようと思っている。
 今までは石膏の直づけによって原型を作ってきたが最近あの蝋型の形のコントロールの自由さのようなものに興味をもったからだ。原型が蝋型だといっても出来上がって来るものはブロンズであるから、ブロンズの質には変りはない。しかし、その表面のもっている風合、見た目のやわらかさの異いなどを確めてみたいと思っている。僕とO-Junは体格もとてもちがうし、彼は大きくてしかも、デリケートだと僕は思っている。作品の目指すところも異なっている。同じだったら気持悪い。

 しかし初めて彼の作品を見た時のことは良く覚えている。絵の上に日本語で、日記だか、心の叫びのような文章が書かれていた。そして、その時、こんなに真正直なことを書いてしまう作家もいるのかと思い感動した。そして、その時、二言三言話をしたのをおぼえている。私は私の作品をつくる。それらが彼の作品と、どんな対話をしてくれるか楽しみにしている。 2000.2.25 舟越直木


舟越直木『SLUUD』

O JUNはドローイング作品、舟越はブロンズ作品、それぞれが4、5点を出品いたします。2人展ならではのふたりの作家の対話を含めて、どうぞご期待ください。

O JUN (おー じゅん)略歴
1956 東京に生まれる。
1982 東京芸術大学大学院修士課程美術研究科修了。
1984 スペイン、バルセローナに滞在。85年に帰国。
1990 ドイツ、デュッセルドルフに渡航。
1994 帰国。現在、東京在住。
1996 「撃墜王」、「秋水」他のリトグラフ5点組を制作(イタヅリトグラフィック印刷)。
1999 「ダムを股ぎ振り向く獣」リトグラフを制作(イタヅリトグラフィック印刷)。
ミヅマアートギャラリー、ギャラリー伝等での個展を中心に、さまざまなグループ展に意欲的に出品している。

舟越直木(ふなこし なおき)略歴
1953 東京に生まれる。
1978 東京造形大学絵画科卒業。
なびす画廊等での個展を中心に発表し、2000年1月〜2月には萬鉄五郎記念美術館で「舟越直木・阿部陽子」展が開催された。



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