2000年11月〜の展覧会


[小川信治展  WITHOUT YOU−画家のアトリエ]

会期…………2000年11月13日(月)〜11月25日(土)

概要…………今年 3月から 5月にかけて行われた豊田市美術館「空き地」展で注目をあび、近年の活躍著しい小川信治の新作展を開催します。今回は、画家のアトリエをテーマにした[WITHOUT YOU]シリーズの新作を発表いたします。マティス、エゴン・シーレ、デュシャン、草間彌生、ギルバート&ジョージ、ピカソ、ウォーホル、エルンストといった9人の作家をとりあげ、アトリエなどの制作現場で撮影した写真の場面から、作家自身を消し去りました。けれど、画面に残された制作の道具はもちろんですが、作家が一瞬にして消えた残像、空気が否応なくその作家を指し示しており、私たちが知らず知らずのうちに認識してしまっていること、について考えさせられます。

「アートは私にとって世界を認識していく作業だ。かつては何かを認識するのにいきなりアナログな実験をしていたが、今日でコンピュータによるシミュレーションがそれにとって変わっている。まず場を作り、環境を与え、計算させる。私の制作スタイルもそういったプロセスに似てるように思える。日々のくらしの中で不思議に思うことはたくさんある。いったいなぜなんだろう、と考えていくちに自分の体験に基づいた仮説らしきものがふと頭をよぎる。その仮説を検証していくことそのものがアート行為となってでてくる。小川信治の検証のやりかたはいまのところ3つある。

  世界や存在の流動性を考えていくための手法…………………“WITHOUT YOU”

  宇宙や世界の大きさや重なりを考えていくための手法………“PERFECT WORLD”

  時間と空間など、次元のことを考えていくための手法………“CHAIN WORLD”などの映像作品」                   2000.7.29  小川信治

誰でもが知っている(既知の)映画や名作絵画の一場面から、登場人物を一人消しさり、残された(描かれた)人物とシーンだけで場面を成立させた[WITHOUT YOU]。絵葉書や写真に、写っている人や物ひとつをもうひとつ描き込み、画面の違和感を問う[PERFECT WORLD]。これらは、「私たちが信じて疑わないもの、普通だと確信しているものが既に異形のものへと変化し始めているという直観につき動かされて制作を始めた」と小川は言っています。極めて伝統的な技法を用いながら、小川の精緻な描写力をもって初めて可能である大胆な試みをさまざま展開し続けています。

小川信治(おがわ しんじ)………1959年山口県生まれ。1983年三重大学教育学部美術科卒業。

 主な個展/94・95・99・2000年名古屋・ギャラリーセラー、97・2000年東京・ときの忘れもの、97年奈良・西田画廊、99年岐阜・ギャラリーキャプション、大阪・ギャラリーほそかわ、2000年東京・レントゲンクンストラウム。

小川信治「WITHOUT YOU-MATISSE」2000年 紙に鉛筆とoil 76.5×57.5cm(紙)

 [第10回瑛九展 〈眠りの理由〉から点描まで]

会期…………2000年12月1日(金)〜12月16日(土)

概要…………1995年の開廊以来、技法やテーマ別に連続して開催してきた瑛九展。今年3月に開催した瑛九画業回顧展に続き、第10回瑛九展を2000年最後の企画展として開催します。

第10回瑛九展では、瑛九のデビュ−作品であるフォトデッサン「眠りの理由」連作(1936年)とともに、晩年の点描(抽象)による油彩の代表作など20点を出品します。

瑛九(Q Ei えいきゅう 本名・杉田秀夫)………1911年宮崎生まれ。1936年フォトデッサン作品集『眠りの理由』を刊行。1937年自由美術家協会創立に参加。戦後1951年デモクラート美術か協会を結成、靉嘔、池田満寿夫、磯辺行久、河原温、細江英公ら若い作家たちの大きな影響を与えた。油彩、フォトデッサン、銅版画、リトグラフなどさまざまな表現方法に挑み、それぞれ独自の世界を生み出す。1960年48歳で死去。

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[紙の上の建築−建築家たちの版画展]

会期…………2001年1月9日(火)〜 2月3日(土)

概要…………古今の建築家たちが敢えて紙という2次元の世界で表現しようとした建築世界。建築が、建築家の手から生まれ出てゆくその瞬間のイメ−ジを視覚化した「紙の上の建築」展です。18世紀、実現した建築物がほとんどなく「空想の建築家」と呼ばれたピラネージの〈牢獄〉連作、建築家であると同時に画家であらんとした20世紀最大の巨匠ル・コルビュジエの挿画本〈直角の詩〉、ア−トと建築を結び文化への意欲的な発言を続ける磯崎新の〈闇・影〉連作、コンクリ−トという無機的な素材に暖かな息吹を吹き込んだ安藤忠雄の〈ベネトン〉連作など、4人の版画代表作20点を出品します。

ジュヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ Giovanni Battista Piranesi………1720年ヴェネツィア共和国モリャーノに生まれる。建築家、考古学者、版画家。父と叔父から建築、特に透視図法と舞台装飾を学ぶ。1740年ローマに行きエッチング技法を学ぶ。1743年作品集《建築と透視図法第一部》を出版。1945年以降はローマに定住し、壮大な建築計画を銅版画に刻んだ。建築家として実現した建物は『サンタ・マリア・デル・プリオラ−ト聖堂』など数少ないが、1000点もの銅版画を残した。1778年没。

版画代表作=《グロテスキ》《ローマの景観》《牢獄》《古代ローマ》《ローマの遺跡》等。

ピラネージ「牢獄・―“The Giant Wheel”(2nd state)」銅版 59.3×44.6cm

ル・コルビュジエ Le Corbusier(本名・シャルル・エドゥアール・ジャンヌレ)………1887年スイスのジュラ地方ラョード・フォンに生まれる。1906年初めての住宅「ファレ邸」を設計。1917年パリに出るが、翌年左目を失明する。『エスプリ・ヌーボー』の創刊に関わり、美術運動にも参加。1922年建築事務所設立。その活躍の場は建築、絵画、彫刻の分野に及ぶ。近代建築国際会議(CIAM)メンバ−として近代建築理論の最大の指導者であり、多くの油彩、版画、詩画集も残した。1965年没。建築代表作=サヴォア邸、新時代館(パリ万博)、ロンシャンの教会、国立西洋美術館(東京)等。

 版画代表作=《ユニテ》《直角の詩》《モデュロ−ル》《永久の海》《二つの間に》

ル・コルビュジエ 画文集《直角の詩》より 1955年 リトグラフ 48×38cm(紙)

磯崎新(いそざき あらた)………1931年大分県生まれ。1954東京大学大学院博士課程修了。1963磯崎新アトリエ設立。建築の実作のみならず、歴史、芸術、文化への深い洞察に支えられた評論執筆や、版画制作、ヨ−ロッパ巡回「間展」の企画構成など国際的な活躍を続け、1999年にはフィレンツェ・ウフィッツイ美術館新玄関の設計者に選ばれた。『空間へ』『建築の解体』など著書多数。建築代表作=大分県立図書館、つくばセンタービル、ロサンゼルス現代美術館、秋吉台国際芸術村、静岡県コンベンション・センター グランシップ、なら 100年会館、オハイオ21世紀科学技術センター等。

 版画代表作=《ヴィッラ》《還元》《内部風景》《銅版画集 栖十二》《闇・霧・影》

磯崎新「影1」1999年 シルクスクリーン 58.3×77cm Ed.35

安藤忠雄(あんどう ただお)………1941年大阪府生まれ。独学で建築を学び、1969年安藤忠雄建築研究所設立。1997年より東京大学教授。幾何学的空間とコンクリ−ト打ち放しという工法に新鮮な造形美を確立し、20世紀後半の建築界に新たな旋風を巻き起こした。

 建築代表作=住吉の長屋、六甲の集合住宅、光の教会、 '92セビリア万博日本館、サントリーミュージアム[天保山]、ファブリカ・ベネトン・アートスクール、淡路夢舞台等。

 版画代表作=《光の教会》《ベネトン・アートスクール》《住吉の長屋》

安藤忠雄「セビリア万博日本館」1998年 シルクスクリーン 49×50cm Ed.35

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