2003年5月〜の展覧会

弊廊「ときの忘れもの」の2003年5月〜の企画展・常設展のご案内を申し上げます。 

第104回企画展/新館落成記念
[ 小野隆生新作展 ]

会場………ときの忘れもの 港区南青山3-3-3 青山CUBE 1階 Tel:03-3470-2631 
会期………2003年5月23日(金)〜6月21日(土) 11:00〜19:00 日曜・月曜・ 祝日は休廊
     初日5月23日は小野隆生さんを交えて、オープニングを開催します。
概要………イタリアの北、スイス・アルプスにも程近いビアンツァーノと、敬愛するペルジーノの故郷でもありイタリアらしさが色濃く残る中央イタリアのチッタ・デッラ・ピエヴェにそれぞれアトリエをつくり、ふたつの町を行き来しながら、油性テンペラという画法で「肖像」をひたすら描き続ける小野隆生。その新作が、2年半ぶりに届きました。
 昨年の夏、ふたつのアトリエを訪ねた我々は、ビアンツァーノのアトリエの壁2面に、40×30cmサイズの「肖像図」が描かれることになる画布が、6、70点、壁に留められているのに圧倒されました。小野はこのシリーズを100点描くつもりだと話していました。どれもおおまかな顔の輪郭や目鼻だちはデッサンされており、すでにテンペラによる筆が入りはじめている絵もありました。真正面から描かれている胸像は、女、男、子供……、太ってたり、痩せていたり、こちらを見据えていたり、どこかを見つめていたり、様々ですが、静けさにつつまれた有り様は厳粛さを感じます。画布から描くべき顔が自然と浮き上がってきて、それを肉体化させるためにメスで切り取っているかのように、小野は筆を重ねます。肖像というのは、本来、ある人間がそこに生きて存在している証として描かれます。しかし、小野の描く人物には、特定のモデルは存在しません。この世に存在しない人間にも関わらず、どこかにこの人間は確実に存在するだろう、街角ですれ違っているだろうと思わせる圧倒的なリアリティをもって、観る者にせまってきます。そして反対に、確実に存在しているはずの自分の存在が何をもって証明されるのか、危うく思えてきます。
今回は、170×60cmの全身像が4点、40×30cmの肖像図10点、計14点の新作を展示いたします。

■小野隆生(おの たかお)………1950年岩手県生まれ。1971年20代に入ってすぐにイタリアに渡 る。ローマやフィレンツェの国立美術学校で絵画・彫刻を学び、1977年には国立ローマ中央修復 研究所絵画科に入学し、ヨーロッパの古典絵画を徹底して究めると同時に、それ以降イタリア各 地の教会壁画や美術館収蔵作品の修復に1985年まで携わる。アッシジのサン=フランチェスコ教 会のジオットによる連作「サン=フランチェスコの生涯」やチマブーエ作「中央祭壇壁画」「磔刑 図」をはじめとして、ローマのコンセルヴァトーリ国立美術館やカピトリーナ国立絵画館の収蔵 作品など数々の修復を手がけた。1976年銀座・現代画廊で第1回個展を開き、以後は個展での発 表を主にし、油性テンペラによる肖像画を一貫して描き続けている。現在、イタリア在住。

「肖像図1-2003」
2003年 画布に油性テンペラ 40×30cm 
「肖像図2-2003」
2003年 画布に油性テンペラ 40×30cm
「窓から外の見えない部屋1(全身像1-2003)」
2003年 画布に油性
テンペラ 170×60cm
 
「窓から外の見えない部屋2(全身像2-2003)」
2003年 画布に油性
テンペラ 170×60cm 
「窓から外の見えない部屋3(全身像3-2003)」
2003年 画布に油性
テンペラ 170×60cm 
「窓から外の見えない部屋4(全身像4-2003)」
2003年 画布に油性
テンペラ 170×60cm 

作品の在庫、価格については、メールもしくはTELにて、お気軽にお問い合わせ下さい。


福井県勝山市の中上邸イソザキホールにて5月16,17,18日の三日間行われました小野隆生展のレポート写真
主催はアートフル勝山の会(代表・荒井由泰さん)

◆小野隆生新作展カタログ
 ときの忘れものは、新館落成記念として5月23日(金)〜6月21日(土)小野隆生新作展を開催しています。
20歳のときイタリアに渡り、以来30年、テンペラによる肖像画を描き続ける小野先生は、時代の流行や流派から遠く離れたところで、自己の表現に淡々と取り組んでいます。
今回は6号10点のほか、170×60cmの全身像連作4点が展示されていますが、今までの画業の転機ともなる意欲作であると私どもは感じています。
また新作14点に加え、1976年からの各時代を代表する作品図版10点を収録したカタログも制作しました。
ご注文はメールにてどうぞ。
 『小野隆生新作展 2003』カタログ 
   *A4判、18ページ、オールカラー図版24点、テキスト/三上豊(和光大学教授)、略歴、
   価格/1,000円(税込)  送料240円

第105回企画展
[ 第13回瑛九展 瑛九とその周辺 ]
第105回企画展 [ 第13回瑛九展 瑛九とその周辺 ]
会場………ときの忘れもの 港区南青山3-3-3 青山Cube 1階 Tel:03-3470-2631
会期………2003年7月4日(金)〜7月12日(土) 11:00〜19:00 日曜・月曜・ 祝日は休廊
概要………自由なる精神にこそ自由な表現が宿るという信念を生涯貫き、様々な技法や、表現形態を貪欲に模索し、出来上がったスタイルに安住することなく、短い生涯に、実に多くの作品を制作した瑛九。油彩は 600点余りが確認され、フォトデッサンは恐らく 2,000点以上が制作されたものと思われます。銅版、リトグラフ、木版などの版画作品は約 500点。その他、鮮やかな水彩作品も数多く残しています。
 
瑛九「水溜り」 1957年
油彩 45.5×53.0cm
瑛九「太陽の家」 1956年
油彩 33.4×24.3cm

 ときの忘れもの2003年の瑛九展は、「瑛九とその周辺」展と名付けました。瑛九は早熟の天才であり、15歳のときには『アトリヱ』『みづゑ』など美術雑誌に評論を執筆し、早くから写真に取組み、1930年代にはカメラを使わず印画紙に直接光をあてて感光させる「フォト・デッサン」を創始します。晩年には遂に油彩点描による独自の抽象画を完成し、亡くなるまで日本の前衛美術運動の最先端にいた作家でした。
 また、瑛九は優れた芸術家であると同時に、熱心な啓蒙家でもあり、若い画家の目を開かせ、激励するのが好きでもありました。まず、長谷川三郎やオノサト・トシノブ、難波田龍起、村井正誠らと自由美術家協会に所属しました。  
瑛九「作品」 吹きつけ
29.5×19.5cm(紙)

村井正誠「顔」 1998年
油彩 27.5×22.5cm
池田満寿夫「静かな動き」 1957年
銅版 26.8×12.7cm Ed.20
難波田龍起「生成の詩A」 1993年
水彩・パステル・ペン 24.7×33.3cm
その後、既存の美術団体や権威主義を拒否し、独立と自由の精神で制作することを主張して、1951年大阪でデモクラート美術家協会を創立しました。この瑛九の考えに共感して集まったのが、靉嘔、池田満寿夫、泉茂、吉原英雄、河原温、木村利三郎、磯辺行久、細江英公、福島辰夫、加藤正、長谷川良雄らでした。1952年には、久保貞次郎を中心に、北川民次らと「創造美育協会」を設立しています。
 作家として、そして人間として周囲に深く愛され、没後もその存在がますます力強いものになっている瑛九。今回は、その瑛九と、彼を取り囲んでいた作家、オノサト・トシノブ、難波田龍起、村井正誠、靉嘔、池田満寿夫、泉茂、磯辺行久、北川民次の作品を合わせて20点を出品します。彼等をとりまく時代の空気、そしてそれぞれ互いに影響を与えた浮き彫りにされることでしょう。

■瑛九(Q Ei えいきゅう 本名・杉田秀夫)………1911年宮崎生まれ。15歳で『アトリヱ』『みづゑ』など美術雑誌に評論を執筆。1936年フォトデッサン作品集『眠りの理由』を刊行。1937年長谷川三郎らと自由美術家協会創立に参加。1951年デモクラート美術家協会を結成、靉嘔、池田満寿夫、磯辺行久、河原温、細江英公ら若い作家に大きな影響を与えた。1960年48歳で死去。
第106回企画展
['70s〜'80s 熱かった版画の時代/NOMURA multiple ART ]

会期=2003年8月22日(金)〜9月6日(土) 
   11:00〜19:00 日曜・月曜・祝日は休廊

出品作家=横尾忠則、片山利弘、靉嘔、吉原英雄、泉茂、
黒崎彰、日和崎尊夫、野田哲也、早川 良雄、田中一光、
粟津潔、菅井汲、前田常作、元永定正、高柳裕、原健、
大沢昌助、井上公三、利根山光人、渡辺豊重、渡辺達正、
宇佐美圭司、堀 内正和、オノサト・トシノブ、田渕安一、
篠田桃紅、馬場檮男、他
 
開催概要=1970年の大阪万国博覧会は、文字通り国家的プロジェクトとして推進され、多くの大企業が参加しました。このとき電通や大日本印刷、乃村工藝社などの大企業が多くの現代作家たちを動員します。
岡本太郎の「太陽の塔」に象徴されるように、現代美術の作家と社会が、この大阪万博を通じて初めて接点をもったといえるでしょう。
そういう流れの中で、1974年乃村工藝社が「芸術作品を家庭やオフィスでもっと手軽に楽しむことを目的」 に美術品の制作・流通に本格的に参入しました。当時の第一線作家たちに依頼して、質の高いマルチプルアート作品(版画と立体)を制作し、マルチプルアート=複数芸術という言葉を定着させた功績は大です。
それは、60年代に興った版画芸術の隆盛を「版元」として支えるという歴史的役割を担ったのでした。
70〜80年代の同社が発表したエディション作品(版画)の中から101点を精選、展示します。

主な出品作品=
 横尾忠則「タヒチの印象 1」1974年 シルクスクリーン 84.0×59.3cm Ed.100
 田中一光「赤と青」1974年 シルクスクリーン 59.1×59.1cm Ed.200
 野田哲也「Diary:Nov.10th '74」1974年 木版+シルクスクリーン 23.2×21.7cm Ed.100
 日和崎尊夫「海球」1980年  木口木版 14.5×10cm Ed.500
 靉嘔「A Flower」1980年 シルクスクリーン 15×10cm Ed.1,000
 菅井汲「二つの球」1980年 シルクスクリーン 8.8×15cm Ed.1,000
 元永定正「くろのだえんから」1981年 シルクスクリーン 10×15cm Ed.1,000
 粟津潔「黒の椿」1981年 木版 14.5×10cm Ed.1,000
 黒崎彰「風に想う」1983年 木版 17.0×16.0cm Ed.365
靉嘔「A Flower」
1980年 シルクスクリーン
日和崎尊夫「海球」
1980年 木口木版
田中一光「赤と青」
1974年 シルクスクリーン
横尾忠則「タヒチの印象 1」
1974年 シルクスクリーン



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