弊廊「ときの忘れもの」の2005年9月〜の企画展・常設展のご案内を申し上げます。 ◆第122回企画展 磯崎新展 闇・霧.影 会期=2005年9月16日[金]〜10月1日[土] 12:00〜19:00 *日・月・祝日休廊 建築家・磯崎新は、1977年以来、自らの建築のコンセプトを版画で表現することに一貫して取り組んできました。 “建築家がなぜ版画をつくるのか”について磯崎新は、「いずれもその建築の基本コンセプトを抽象化し、視覚化してある。実際にできた建築は三次元的なものだし、内部に空間をかかえこんでいるから、その見えかたも体験のしかたも違っている。しかし、それが構想されるときには、手がかりとなるひとつの形式を導入せねばならない。版画で表現しようとしているのは、その部分である。だから、建築が、建築家の手からうまれでていくその瞬間のイメージの視覚化といっていい。それと同時に、建築家が自分の仕事をもういちど解釈しなおそうとしている部分もある」と述べています。 今回の個展では、1990年代の代表作である奈良市・なら百年会館をモチーフにした「闇」シリーズ、山口県・秋吉台国際芸術村をモチーフにした「霧」シリーズ、アメリカのティーム・ディズニービルをモチーフにした「影」シリーズから11点を出品します。 また、近年精力的に取り組んでいる銅版画作品の中から、ライト、ル・コルビュジエ、ミース、マッキントッシュなど古今東西の12人の建築家の小さな住宅作品へのオマージュとして制作された『栖十二』シリーズも展示します。 DARKNESS 闇 1999 シルクスクリーン 58.3×77.0cm(紙70.0×90.0cm) Ed.35 MIST 霧 1999 シルクスクリーン 58.3×77.0cm(紙70.0×90.0cm) Ed.35 SHADOW 影 1999 シルクスクリーン 58.3×77.0cm(紙70.0×90.0cm) Ed.35 ■ 磯崎新(いそざき あらた)1931年大分市生まれ。1954年東京大学工学部建築学科卒業。1961年東京大学数物系大学院建築学博士課程修了。1963年磯崎新アトリエを設立、現在に至る。 代表作 大分県立図書館(1966)、福岡相互銀行本店(1972、1984)、群馬県立近代美術館(1974)、つくばセンタービル(1983)、MOCA―ロサンゼルス現代美術館(1986)、バルセロナ市オリンピック・スポーツホール(1990)、ティーム・ディズニー・ビルディング(1991)、山口県秋吉台国際芸術村(1998)、など。 著書 「空間へ」「建築の解体」「手法が」など多数。 展示風景 ◆第123回企画展 ジョナス・メカス展 会期=2005年10月14日[金]〜29日[土] 12時〜19時 *日・月・祝日は休廊 一昨年から何度も予告しながら延び延びになっていたジョナス・メカスさんの新作写真展が遂に実現します。初日14日の午後5時からのオープニングには80歳を超えたメカスさんが9年ぶり4回目の来日をされます。 新作の制作がぎりぎりまでかかったので案内状には1983年制作の初めての版画作品を掲載しました。20数年間、眠っていた幻の作品です。 新作の掲載は順次行なっていきますので、しばらくお待ちください。 新作は、映画『ウォルデン』の中から<ニューヨーク>に絞った写真30点です。 19世紀アメリカの思想家H.D.ソーローの著作『ウォルデン、または森の生活』からタイトルをとったこの映画は、1965年から68年に撮影され、日記的な記録映像を集成し、メカス独自の「日記映画」が実現された記念すべき最初の作品です。 今回「ウォルデン」から制作された<フローズン・フィルム・フレームズ−静止する映画>とは、彼自身が撮影した16mmフィルム より、数コマ程度の部分を抜き出し、写真として焼きつけるシリーズです。ず っと「動くフィルム」である映画を撮ってきたメカスさんが写真作品を制作したき っかけについて、著書『フローズン・フィルム・フレームズ−静止する映画』 (木下哲夫訳、1997年・フォトプラネット刊)の中で、次のように語っていま す。 ・・・・・1980年代に)日本の友人たちに一つの相談をもちかけました。というのは、 私が運営する「アンソロジー・フィルム・アーカイヴズ」には、映画はたくさんあるのですが、維持していくためのお金がない(笑)。それでなんとかなら ないだろうか、と相談すると、私の60年代の映画の中からギンズバーグやダリ といった有名人たちのイメージを抜き出して、それを東京でシルクスクリーン に焼き付けて売ればお金になるんじゃないか、と言われたんです。それでこの 仕事が始まったのですが、有名人のイメージを十ほど選んで友人たちに送ったら、スポンサーになろうと言っていた人が急に破産してしまって、このプロジェクトは御破算になってしまいました。しかし、この頃には私はもう自分を止められなくなってしまった(笑)。・・・・以下略 ジョナス・メカスさんから、この連作30点に寄せるメッセージが届きました(木下哲夫訳)。 千の破片に砕けようとしていたわたしを抱きとめ、 新しい暮らしをあたえてくれた街、 わたしの正気を守ってくれた街、ニューヨーク。 30点の映像はわが街ニューヨークに捧げるラブ・レター。 愛しい街、ニューヨーク。 わたしは今よそにいる。 ほかにも愛しい街はいくつもある。 しかしニューヨークに寄せるこの愛は いつまでも変わることがないだろう。 同時に、オリジナル写真と版画を挿入した『版画掌誌第5号』も別記の通り刊行します。 同誌に寄せられたメカスさんの原稿の一節を紹介します(木下哲夫訳)。 <なぜわたしたちはいつまでたってもちっぽけなアンダーグラウンド映画を撮っているのか、なぜホーム・ムービーのことばかり話しているのか、あなたがたはときどき不思議に思うのではないでしょうか。そしてときには、近いうちに事情が変わればいい、と考えることもあるでしょう。そのうち連中も大作映画をつくるようになるだろうから、それまでちょっと待ってみよう、そんな気持ちではありませんか。でも、わたしたちはこう答える でしょう。それは誤解ですよ、とね。わたしたちは、本物の映画をつくっているのです。 わたしたちのしていることは、人間の魂の奥深いところにある欲求にしたがうものなのです。人間は自分の外で自分を徒に費やしてきました。人間は自己の投影のなかに、自分を見失ってしまったのです。わたしたちは人間を、そのひとの小さな部屋に、家庭に連れもどしたいのです。人間に、家庭というものがあることを思い出させたいのです。ときには独りきりにもなれるし、限られた数の愛しい身近な人びとだけと時を過ごし、自分の魂と向きあえる家庭があることを。ホーム・ムービーの意味するところ、わたしたちのつくる映画の私的な視点が意味するのはそこなのです。この地球をわたしたちのホーム・ムービーでうめつくしたいのです。わたしたちの映画は、わたしたちの心から出たものです。ハリウッド映画のことではありませんよ。わたしたちがつくるちっぽけな映画のことです。 それはわたしたちの脈搏、心臓の鼓動、目、そして指紋の延長です。その動き、光の使い方、イメージのどれをとっても、こよなく私的で、野心的なところはかけらほどもありません。わたしたちはこの地球を、わたしたちの映画のフレームで満たし、暖めてやりたい のです。そうすれば、いつか地球が動きだすときが来るでしょう。> 暖かな人柄が滲み出ているような素晴らしいメッセージだと思いませんか。私たちが生きるこの世界のありのままを見つめ、人間の弱さ、悲しみ、喜びを、淡々とそして情感豊かにフィルムに焼き付けてきたメカスさんの作品をご紹介できることを、私たちはとても嬉しく思っています。案内状にある1985年に「急に破産してしまっ」た人とは実は私たちのことです。 あれから20年、やっとメカスさんにご恩返しができそうです。ご来廊をお待ちしています。 1)DM掲載の版画作品(限定75部) シート価格@57,750円(税込み) 額装価格 @73,500円(税込み) 2)新作写真『WALDEN』シリーズ30点(限定10部) 展示風景
★オープニング風景★ ◆メカス新作映画『グリーンポイントからの手紙』上映会 上映日=10月21日(金)午後7時より、 上映時間=80分 会場=ときの忘れもの 会費=2,000円(ワンドリンク付) 要予約=お申し込みはメールで「ときの忘れもの」まで。 ◆オリジナル版画入り『版画掌誌第5号』 同時代の優れた作家の紹介と、歴史の彼方に忘れ去られた作品の発掘を目指すオリジナル版画入り大判美術誌『版画掌誌ときの忘れもの』第5号を11月中旬に刊行します。 特集1/ジョナス・メカス・・・フローズン・フィルム・フレームズ(静止した映画)と呼ぶ写真作品を紹介。テキスト執筆はジョナス・メカス。 特集2/日和崎尊夫・・・1992年50歳の若さで死去した日和崎尊夫の遺した木口木版画の秀作を紹介。テキスト執筆は谷川渥。 A版35部( 1/70〜35/70) 作品4点入り 挿入作品イ.=メカスの自筆サイン入り新作写真 版画掌誌5号A版(35部)には二種類の写真が挿入されます。
挿入作品ハ.=日和崎の自筆サイン入り木口木版画「たがねの花」(レゾネNo.384) 挿入作品ニ.=日和崎の刷込みサイン入り木口木版画「殖」(レゾネNo.337) B版35部(36/70〜70/70) 作品3点入り 挿入作品ロ.=メカスの自筆サイン入り新作版画(シルクスクリーン) 挿入作品ハ.=日和崎の自筆サイン入り木口木版画「たがねの花」(レゾネNo.384) 挿入作品ニ.=日和崎の刷込みサイン入り木口木版画「殖」(レゾネNo.337) メカスさんの挿入作品はただいま制作中です。 日和崎尊夫の挿入作品2点はいずれも生前1978年に制作され、大切に保存されていたもので、後摺りではありません。前号までの版画掌誌は限定135部でしたが、今回は日和崎作品「たがねの花」が70部保存されていたので、上記のような発行部数となります。 ◆10月23日(日)〜25日(火)前川國男、洋風建築、温泉の弘前ツアー 青森県弘前市は「旧第五十九銀行」「弘前学院外人宣教師館」など国の重要文化財が9件もあり、特にル・コルビュジエに学び、日本のモダニズム建築を主導した前川國男(1905〜1986)の処女作・1932年竣工の「木村産業研究所」から晩年の「弘前市斎場」まで8棟もの名建築が残されています。明治12年建築の老舗・石場旅館を拠点に弘前市内の建築探訪、二泊目(オプション)は日景温泉で東北の紅葉を堪能しましょう。23日夜には地元の人たちとの交流会を植田実先生(建築評論)を囲み開催します。ぜひ皆さんご参加下さい。 ◆次回企画は、11月11日[金]〜26日[土]まで「日和崎尊夫展」です。 ◎磯崎新 連刊画文集[百二十の見えない都市] 第二期刊行概要と予約募集要項 連刊画文集とは、作家の作品創作と予約購買者への頒布を同時進行的に行うシリーズ版画のエディション企画です。すでに明治末から昭和初期における創作版画のなかには、この方法でつくられた名作が少なくありません。海外においても長年月をかけて制作された大連作版画の誕生のかげには、版元とそれを支えるパトロンたちの後援がありました。 磯崎新のほとんどの版画を版元としてプロデュースしてきた「ときの忘れもの」は、予めパトロンを募るという方式で、10年間で『百二十の見えない都市』を版画とエッセイで描ききるという壮大なプロジェクトを開始しました。第一期12都市は2003年1月に完結しました。引き続き第二期の刊行を進めています。 作品内容/ 今回の第二期の作品制作においては、挿入作品2点(銅版)のほかに、エッセイと絡んでさらに大判作品(シルクスクリーン 用紙サイズ40×120cm!)が1点追加されることとなりました。従ってお届けする作品は一都市につき3点、12都市で36点という大画文集になります。 作者―磯崎新 企画編集―植田実 装幀―北澤敏彦 制作進行―綿貫不二夫 発行―ときの忘れもの サイズ ・銅版画用紙サイズ=38×38cm ・本文シルクスクリーン用紙(三つ折り)サイズ=40×120cm (各作品サイン・番号入り) ・たとうサイズ=40.6×42.5cm 版画 石田了一工房、白井版画工房など日本を代表する刷り師の協力を得て各種技法(および併用版やコラージュ)で制作します。 ◎予約定員35名。 ◎ 第二期(12都市)予約特別価格 お問い合わせ下さい *各号の分売は致しません。 申込は先着順に、1〜35の限定番号を決め、定員になり次第、締め切らせていただきます。複数年度の予約も可能です。 *予約購読者のお名前を画文集のパトロンとして奥付に刷りこみます。 【TOP PAGE】 |