◆菅原一剛写真展―Blue 会期=2013年10月16日[水]―10月23日[水] 12:00-19:00 ※会期中無休
菅原一剛_ Daylight | Blue [2会場同時開催] 会期:2013年10月16日(水)―10月23日(水) 12:00〜19:00 企画:仲世古佳伸(NAKASEKO ART) 協力:WOW 第1会場 「菅原一剛_Daylight」 ギャラリー360° 日曜・祝日休み 東京都港区南青山5-1-27-2F Tel 03-3406-5823 www.360.co.jp 第2会場 「菅原一剛_Blue」 ときの忘れもの 会期中無休 東京都港区南青山3-3-3 青山Cube101 Tel 03-3470-2631 www.tokinowasuremono.com 作家在廊日 10/17 時間未定 10/18 15時〜17時 10/19 13時〜 10/23 時間未定 8月23日に、ヴィジュアルデザインスタジオWOWにてプロデュース・制作した菅原一剛写真集『Daylight | Blue』が、BNN新社より刊行されました。(価格6,300円、2冊1組、デザイン:丸山新(&Form)) 写真集には、デビューから約28年の間に制作された代表作が集約されています。 それにともない、ギャラリー360°と、ときの忘れものの2会場で、菅原一剛の出版記念写真展を同時開催することになりました。 写真家・菅原一剛は、大阪芸術大学の写真学科を卒業後、早崎治氏に師事し、商業写真を学びます。1986年にフランスに渡り、翌年フリーの写真家として活動を開始した菅原は、風景や植物、人物を被写体に数々のオリジナルプリントを制作してきました。近年は"光の温度"を写真にとらえる方法として湿板写真などを探求し、写真の古典技法とインクジェットプリントを組み合わせることで、今までにない、新しい写真の可能性に満ちた作品を制作しています。 ギャラリー360°では、写真集『Daylight』に収録されている2000年代から最新作までの中から、あたたかい光の世界をとらえた湿板写真の大型作品〈Amami〉と、〈Komorebiシリーズ〉、〈Tsugaru〉などのプリントを数点展示します。また、今回の写真集のためにWOWの制作したスライド映像を使ったインスタレーションを試みる予定です。 ときの忘れものは、写真集『Blue』に収録された1990年代の代表作である、ヴェネチアのサンマルコ広場にある列柱の表情を撮影した〈Correspondances〉のシリーズと、北欧のノルウェーで出会った、スタルハイムの滝の美しい水しぶきをとらえた〈Norway〉の中から、14点のプリントを展示します。 また、会期中の10月19日(土曜)午後3時より、菅原一剛さんと今展の企画者であるアートディレクター仲世古佳伸さんと一緒に、2会場を周るギャラリーツアーを開催します。ツアー終了後、ギャラリー360°にてオープニングレセプションを行います。是非、ご参加ください。 ■菅原一剛(1960-) 1960年札幌生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業後、早崎治氏に師事。フランスにて写真家として活動を開始して以来、数多くの個展を開催。1996年に撮影監督を務めた映画「青い魚」は、ベルリン国際映画祭に正式招待作品として上映される。2004年、フランス国立図書館にパーマネントコレクションとして収蔵される。2005年、ニューヨークのPace MacGill Gallery にて開催された「Made In The Shade」展にロバート・フランク氏と共に参加。また同年、アニメ「蟲師」のオープニングディレクターを務めるなど、従来の写真表現を越え、多岐にわたり活動の領域を広げている。近年は、光の眩しさを写真にとらえる方法として、湿板写真などを探求し、写真の古典技法と最新のデジタル技法を組み合わせることで、今までにない新しい写真を作り出している。2010年、サンディエゴ写真美術館に作品が収蔵される。2011年個展「The Bright Forest」Trunk Gallery,Seoul、2012年個展「Tsugaru」Leica Ginza Photo Salon,Tokyo開催。 【最近の主な写真集・著作】 『写真がもっと好きになる。』ソフトバンク・クリエイティブ刊、 上高地帝国ホテル75 周年記念写真集 『神河池』帝国ホテル刊、 写真集『DUST MY BLOOM』ソフトバンク・クリエイティブ刊 、 写真集『TSUBAKI』クレー・インク刊、 『今日の空』ソフトバンク・クリエイティブ刊 【ウェブサイト】www.ichigosugawara.com Daylight 光という存在は、目に見えるようでいて見えない不思議な存在です。 それでもぼくは、そんな光の中に存在している温度を、なんとしても写真の中に定着させたいと、そんな世界をずっと探し続けていました。 そして、とにかく自身にとってのあかるいところを探している中で、偶然にも奄美と出会いました。すると、その土地は眩ゆいばかりの光溢れるところであったのはもちろんのこと、そこに暮らす人々も含めて、とてもあたたかいところでした。 そして今、奄美で感じたあたたかい光の世界を、不思議なことに北国の津軽の中でも見つけることが出来ました。 Blue 写真を始めて間もない頃、それがモノクロ写真だったこともあって、具体的に写っているもの以上に、むしろその世界に存在した“光の残像”のようなものが映し出されているような印象を受けました。そして時折、そんな一枚の写真の中に、そこに存在する色や香りが響き合うすがたと共に、自身の小さな思いのようなものを、偶然にも映し出されることがあります。ぼくは、そんな自身の日常の未分化な世界の中に、ある種の温度のようなものを探し続けていたのかもしれません。そしてそのすがたは抽象的でもなく、かといって具象的でもない、まるで夢のような世界でした。 菅原一剛の写真/断章 仲世古佳伸 1 もう25年も前のことだが、菅原一剛が撮影したサンマルコの回廊にある大理石の列柱の写真を見たとき、僕は"肖像"だと思った。それと同時に、真正面に起立した肖像の数々が、不意に静かなマチエルをまとい、光や音や時間のざわめき立つ"抽象"のようにも映った。写真家の言ったCorrespondances(呼応)というボードレールの言葉を思い出し、改めて写真と対面してみたが、このざわめきは一層の高まりを奏でながらも、静寂とした元の場所に立ち続け、毅然とこちらを向いたままだった。 頑固なまでのアティテュードと、狩猟者のまなざしで対象を写し取る写真家の眼の、何といさぎよいことか。概念を嫌い、流行は他人に預け、菅原一剛は、ただひたすらに"光のすがた"を追い求めていく。 2 古典技法であるガラス板に、風景を定着して並べた湿板写真の作品がある。2003年に、奄美の森の中で撮影した木漏れ日をとらえたこの写真で、菅原一剛は「写真の物質性」と「光の形象化」を試みた。僕らは通常、写真を重いものとして見ることはないが、ガラス板を用いたこの写真は、ズシリと重い。そして、粒子であり、あたたかい波動を発する形象としてとらえられた光のすがたが、精霊のように漂い、見るものの意識をゆさぶる。写真として露呈された光の形象は、サンマルコの列柱の、あのざわめいたマチエルと通じているように思える。 写真家のめざす「あかるいところ」、「あたたかいところ」とは何処なのか。地上にあり、光から逃げられないものたちの還るところであり、満ち満ちた"起源"のざわめきの聞こえるところであり、光と生命の呼応するところであるに違いない。 3 スタルハイムの滝の写真を見て、最初スティーグリッツの雲の写真「イクィヴァレント」を想像したが、改めて思うのは、水の「非等質性」ということだ。被写体と内面のあいだには、象徴という衝動が働くが、象徴とはやっかいなものだ、詩的にも、観念的にも写ってしまうからだ。全身を開ききり、"滝に打たれる"菅原一剛の情動が迫ってくる。轟音を立てて立ちはだかる滝を前に、写真家は非均質に抵抗を示す「水の襞」に、一体何を見続けていたのだろうか。あるいは水の襞は、「光の襞」と言い換えてもいいもかもしれない。 襞はさまざまな光の粒子をまとい、写真家を翻弄し、ときにその正体をあらわにする。音と匂いと、温度と官能の混じり合う滝の中に、あたたかいものを感じたという、そのあたたかさの正体とは何だろうか。異形の滝の表情の奥に見え隠れする正体が、決してのっぺりとしたすがたでないことだけは想像できるのだが。 4 写真が言葉の通りに、真実を写さないことも、真実が写真のように存在していることも、また、世界は意図や支度の不在したありさまだということも僕らは認識しているが、ときに、実態と表象のあいだにゆらぐ写真のまなざしを前に戸惑うことがある。秩父の森の中で撮影した菅原一剛の、「Hidamari」の写真群もそのひとつだ。写真は、乱立する木々の内で光を追う写真家の身体の軌跡をとどめるが、そのあとかたは、眩しく発光する、流動的な光の動きと戯れながらも、何処か怪しい気配を湛えている。 眼に見える実態が、いつも風景だとは限らない。写真家は森全体を充たす、その圧倒的な明るさを前に、"光の感情"を見たに違いないのだ。自然と感情のあいだでゆれる様、風景を認識するとはそういうことかもしれない。光、そして、あたたかいところ、その正体を無心に追い求める写真の内に、神聖なものを呼び戻そうとする、菅原一剛の感情を見た。 (なかせこ・けいしん/アートディレクター)
■仲世古佳伸 NAKASEKO Keishin アートディレクター 1955年三重県生まれ。1980年大阪芸術大学芸術計画学科卒業後、(株)イガラシステュディオに勤務し、五十嵐威暢のもとでCI、サイン計画などの仕事に従事する。1991年ナカセコアート設立。グラフィックデザイン・クリエイティブのアートディレクション、展覧会の企画・構成・キュレーション、テキストの執筆、アート作品の制作など、デザインとアートを横断する多義的な表現活動を行なう。 【主なキュレーションとディレクション】 1995〜2000 アートイベント「モルフェ」の総合アートディレクション(東京青山周辺) 1996 「眼差しと視線01/02/03」(ミヅマアートギャラリー) 1998 「ゲームの規則」(ギャラリーアート倉庫/東京) 2002 「ひとりごっつー松本人志の世界展」(ラフォーレミュージアム原宿/東京) 2009 「オクターブ01/02」(TIME AND STYLE MIDTOWN/東京) 2010 「TDW-ARTジャラパゴス展」(東京デザイナーズウィーク2010/東京) 2011 「TARO LOVE 展 岡本太郎と14人の遺伝子」(西武渋谷店)、「ジャラパゴス展」(三菱地所アルティアム/福岡) 2012 「ジパング展」(高島屋/日本橋/難波/京都)、「えどがわ、アートな日和」(しのざき文化プラザ企画展示ギャラリー/東京) 2013 「ワンダフル・マイ・アートー高橋コレクションの作家たち」(河口湖美術館/山梨) <菅原一剛写真展―Blue>出品リスト 2013.10.16[Wed] - 10.23[Wed]
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