第369回 オディロン・ルドンとロベルト・マッタ 2024年7月24日(水)〜8月3日(土) 11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊 ※画像をクリックすると拡大して表示されます。 |
フランスの象徴主義を代表する画家オディロン・ルドンと、シュルレアリスム運動に参加したロベルト・マッタの幻想的な版画や潜在意識に導かれた絵画を紹介します。
ルドンは1888年から1896年にかけて、ギュスターヴ・フローベールの小説『聖アントワーヌの誘惑』を題材に42点(表紙を含む)のリトグラフを制作しました。幻覚を見るような魔的な世界を、自身「あらゆる色彩の中で最も本質的な色」とした黒一色で表現したルドンの代表作として知られています。1888年に第一集(全11点 限定60部)、翌1889年に第二集(全7点 限定60部)を制作、第三集 は1896年の初版(全24点 限定50部)と1933年版(全22点 限定220部、1938年刊行)の2種類のエディションがあります。本展では『聖アントワーヌの誘惑』 第三集第二版の全22点と、色彩リトグラフ《ベアトリーチェ》を展示します。
今年はシュルレアリスム宣言100年記念の年です。マッタは、無意識の作用によって霊媒のように筆を動かして表現するシュルレアリスムのオートマティスム(自動記述法)に共鳴し、50年以上にわたって独自の理論を構築し、表現しました。マッタ自らの心の深淵から引き出した世界を描いた幻想的な銅版画連作をご紹介します。
■オディロン・ルドン Odilon REDON (1840-1916)
フランスの象徴主義の画家。1840年ボルドー生まれ。15歳のときに画家のスタニスラス・ゴランから素描を学び、ゴランを通して知ったウジェーヌ・ドラクロワの作品などに感銘を受ける。また植物学者のアルマン・クラヴォーからの紹介で、エドガー・アラン・ポーやシャルル・ボードレールの文学にふれる。一時、画家ジャン・レオン=ジェロームの教室に通うが、新古典主義に順応できず地元に戻る。その後、ボルドーに定住していた放浪の版画家ロドルフ・ブレスダンに師事。ブレスダンのロマン主義的な作品から影響を受け、後の伝記的主題につながる。
普仏戦争後、素描家になることを決心してパリに移住し、木炭による素描を広く発表するための方法を模索する中、出入りしていたサロンでリトグラフ技法を教わり、これによって初の版画集『夢のなかで』(1879年)を出版。続いて、ポーの小説に着想を得た『エドガー・ポーに』(1882年)、チャールズ・ダーウィンの進化論を独自に解釈した『起源』(1883)を刊行し、作中では、世界を見通すための道具として「眼球」のモチーフを多用している。1888年から1896年にかけて、代表作となるギュスターヴ・フローベールの文学作品を題材にした石版画集『聖アントワーヌの誘惑 第一集〜第三集』を制作。幻覚を見るような魔的な世界を、「あらゆる色彩の中で最も本質的な色」とした黒一色で表現した。第三集に限り、初版と1933年版の2種類のエディションが存在する。
1916年没。
■ロベルト・マッタ Roberto MATTA
1911年チリのサンティアゴに生まれる。サンティアゴの大学で建築を学んだ後、1933年パリへ渡る。1934年〜36年ル・コルビュジェの事務所で働く。1937年よりシュルレアリスムのグループに参加し、翌年パリのシュルレアリスム国際展に出品。1942年ニューヨークのピエール・マティス画廊で最初の個展を開催。以後、次々と大作を発表し、後期シュルレアリスムの代表的な画家となる。 2002年、歿。
出品作品紹介 |
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