第273回 恩地孝四郎展
会期=2016年2月6日[土]―2月20日[土] 12:00-19:00
※会期中無休
1891(明治24)年東京に生まれた恩地孝四郎は、日本創作版画協会(1918年)、日本版画協会(1931年)、日本版画奉公会(1943年)の創立に参加、国画会版画部に属し、戦後の日本版画協会再建(1946年)にあたっても中心的な役割を果たした文字とおり近代日本の版画の代表作家であり、指導者でした。
のみならず日本における抽象表現の先駆として世界的なレベルでの多くの作品を残した恩地は、 「色と形を以つて、心を表現するのが、本来美術の純粋形態である筈だ。それが、美術は形を模さねばならぬものといつのまにか定められて了つてゐる。(中略)凡そ、知解にうつたへる芸術ほど下等なものはないのだ。すべての中間作品、通俗作品がそれである」(版芸術1932年 4月創刊号)と鋭く指摘したように、版画とか油彩とかの表現手段を超えて明確に自己の目指すものをつかみ、またそれを様々な材料と技法を使い表現することができた稀有な作家でした。
昨年は没後60年ということもあり、雑誌『月映』を記念した展覧会など、恩地孝四郎展がいくつも開催されました。さらに今年の1月13日からはホノルル美術館など海外から60点もの作品を集めた大回顧展が東京国立近代美術館で始まりました。
ときの忘れものでは、木版画を中心に水彩、素描など約20点をご覧いただきます。
●イベントのご案内
2月12日(金)18時より西山純子さん(千葉市美術館主任学芸員)を講師に迎えてギャラリートークを開催します(要予約/参加費1,000円)。
※必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申込ください。
E-mail:
info@tokinowasuremono.com
■恩地孝四郎 Koshiro ONCHI(1891-1955)
1891年東京生まれ。竹久夢二に感化を受ける。東京美術学校で洋画・彫刻を学ぶが中退。藤森静雄・田中恭吉と[月映]を刊行。萩原朔太郎の詩集『月に吠える』の装幀と挿画を担当、28年『北原白秋全集』の装幀で装本家の地位を確立。抽象画の先駆者、また日本の版画界のリーダーとして大きな足跡を残した。『飛行官能』『海の童話』『博物誌』『虫・魚・介』など優れた自作装画本を刊行した。1955年永逝(享年63)。
繊細でシャープな抽象作品の数々が、創作版画のみならず日本における抽象表現の先駆として高く評価されている恩地孝四郎ですが、94年に横浜美術館で開催された回顧展では、初期から晩期にいたる版画作品をはじめ、本の装幀、オブジェ、写真作品などが網羅され、この画家の才能がいかに時代に先駆けていたかを改めて再認識させるものでした。
展示風景
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