ときの忘れもの ギャラリー 版画
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靉嘔 Ay-O
《海原野 I》

1978年
スクリーンプリント
イメージサイズ:44.5x85.5cm
シートサイズ:55.0x110.0cm
Ed.75
サインあり
※レゾネNo.345(叢文社)
額付き

◆私の版画人生で、最大のヒット作品です。
海原野(うみげんや)というタイトルが先ずいいですね。
1978年に私が主宰していた現代版画センターで3点組でエディションした作品のひとつです。
現代版画センターは1974〜1985年までに約700点のエディションを出版しましたが、最速で売り切れたのがこの作品でした。
一方、全くといっていいほど売れなかった筆頭が草間彌生先生の《南瓜》(1982年 シルクスクリーン 68.6×55.0cm Ed.50 レゾネNo.16.)でした。

あっという間に売り切れた《海原野》シリーズと、泣きたいほど売れなかった《南瓜》、20数年たったいまあらためて見ると、ともに作家の代表作だとわかります。
売れる、売れないは、ちょっとした時間差なのでしょうね。

靉嘔先生自身がレゾネに書いた回想を引用すると、
<・・・《海原野》T・U・Vが現在あるのは又偶然といえる。或る日乃村から現代版画センターのメンバーになった吉岡さんがかなり大きな紙をもってやって来た。ストックが沢山あるのでこのサイズの作品をつくってくれないかというのだ。私は大きなサイズならいつでも興味が湧くのが不思議だがこの紙を見た瞬間もう何をするかがきまってしまったことをおぼえている。これはどういう事かというと、私の製作態度はいつもそれは一つのEVENTとも云える。最初一つの場があたえられる。それが好きな場だとスムーズに次の行動へ移れるわけだ。結果は想定外の事なのだ。したがって小さく窮屈な場は居心地がわるいのだろう。《かもめ》(注・レゾネNo.348)はやはり少し窮屈かもしれない。《海原野》はずい分自然的結論なのが少しおかしい。>
という経緯でこの作品は誕生しました。

もう時効なのでばらしてもいいでしょうが、この頃私は敬愛するオノサト・トシノブ先生のために110×110cmという、当時としては巨大な紙を特注でつくり(規格サイズだと90cmが最大だった)、1m角の大きな版画連作の制作を依頼しました。
当初はオノサト先生も乗り気だったので、大枚はたいて紙を漉いてしまったのですが、土壇場になって先生から断られてしまった。
泣く子と作家には勝てない。まあ、いきさつはいろいろあったのですが、話が流れてしまい、残されたのは110×110cmの巨大な紙が数百枚・・・・・

私、泣きました。いったいこの紙、置く場所にも困るし(当時の現代版画センターはマンションの一室でした)、どうしようと思案したとき、ちょうど乃村工藝社(乃村マルチプルアートセンター)からスカウトした制作担当の吉岡さんが《綿貫さん、これを半分に断裁し、110×55cmにしてから、他の作家に使ってもらおう》と提案してくれたのでした。
せっかくつくった特大サイズの紙を真っ二つに裁断してしまうという思い切りの良さは私にはなく、吉岡さんの卓見でした。
靉嘔先生にはオノサト先生とのことなどおくびにも出さず、アタックしたのは上述の通り。
そして誕生したのが《海原野》3連作でした。
靉嘔先生には《レインボー北斎》(1970年)など1mを超える大きなサイズの作品はあったのですが、すべて組版画で、いくつかのパーツに分けて刷ったものをつないだものです。
正真正銘1mを超える紙に刷った作品はこれが最初でした。
あのときオノサト先生が私の依頼を受けてくださっていたら、この靉嘔先生の大傑作は生まれていなかったかも知れない。
偶然とはいえ、没になった企画がもとで生まれた作品が記録的にヒットして、私も実に気分が良かった。
どのくらい評判が良かったか、一例を挙げると、公立の北九州市立美術館が発表されるや否や3点セットで直ちに購入してくれた。当時、美術館への納入は1年から2年かかるのが普通だったのであまりのスピード購入に驚いた記憶があります。

それでもまだ紙は大量に残っている。
それで、菅井汲先生にお願いしてこの《海原野》シリーズと全く同じサイズの作品を3点制作していただきました。《トランプ》シリーズです。
《ジャック》《クイーン》《キング》ともに縦長の1978年の作品です。

それでもまだまだ紙は大量に残っていました。
最後は元永定正先生にお願いして、やはり同じサイズの作品を4点(縦長、横長2点づつ)制作していただきました。
《みぎひだり》《さんかく》《ふにやらくにやら》《うきふたつ》ともに1979年の作品です。

へんないきさつから靉嘔、菅井汲、元永定正各先生たちの大判連作をエディションできたことは、私の楽しい(今となってはですが)思い出です。
因みに、靉嘔作品を刷ったのは昨年亡くなられた岡部徳三さん、菅井・元永作品の刷りは石田了一さんでした。

久しぶりに還ってきた《海原野》を見て懐かしさのあまり、おしゃべりしてしまいました。
保存状態は完璧です。どうぞご注文ください。

靉嘔
《海原野 I》
SOLD

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