渡辺貴子のエッセイ 第2回 「初めての表現方法」 2010年7月28日 |
陶芸のコースを専攻したにもかかわらず、プロジェクトでは粘土で作品を作る事ばかりではありませんでした。紙やプラスチック等、使う素材もさまざま。立体制作だけでなくドローイングや版画の授業もありました。そんな数々の課題の中で、今でも忘れられない事があります。
いつものようにスケッチブックを持った私達は、バスで郊外へ出掛けました。「今日は何を描くのだろう・・・」と、のんびりと外の景色を眺めるのも束の間、予想もしない課題にピクニック気分は苦悩の一日になりました。 その課題とは、「自然を使っての制作!?」だったからです。 降りた場所は見渡す限り、岩の続く山道。道具ひとつ持っていないのに、ここで制作しろというのです! 何の規制も無い自由な状態に、ただただ途方に暮れるばかり・・・とりあえず木片や小石などを集めたものの、なかなか形にはなりません。絶体絶命の状態に、私は一から作ることを諦め、作品になりそうな場所を探すことにしました。 観察しながらウロウロ、やっとの思いで渦巻きの岩穴を見つけました。「これで何とかするしかない!」と、やけくそになった私は、集めた木片を渦巻きに沿って置いていきました。するとそれは、岩の上に渦巻きの木が生えているようになっていきました。 作品と呼べる物かどうか分かりませんでしたが、なんだか胸がドキドキしてきました。 私にとって初めての表現方法を経験した時でした。 この事をきっかけに、それまであまり興味の無かったインスタレーションや陶芸以外の表現を面白いと感じるようになりました。 今では好きなアーティストの一人である、Andy Goldsworthy の作品を見る度に「あの時に知っていたら、その課題にそんなに悩む事もなかっただろう・・・」と思うのですが・・・。 陶芸制作とは全く関係の無いような課題でしたが、「陶芸=器」というような私が持っていた強い概念が、少し取り払われた気がしたのでした。 (わたなべたかこ) 「渡辺貴子のエッセイ」バックナンバー 渡辺貴子のページへ |
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