百瀬恒彦 Tsunehiko MOMOSE
百瀬恒彦ポートフォリオ『無色有情』
発行日:2014年4月2日
発行:ときの忘れもの
限定12部(1/12〜12/12)
・たとう箱入オリジナルプリント10点組
・各作品に限定番号と作家直筆サイン入り
テキスト:谷川俊太郎/百瀬恒彦
技法:ゼラチンシルバープリント
用紙:バライタ紙
撮影:1990年
シートサイズ:203×254mm(六つ切り)
|
|
|
(それぞれの画像をクリックすると、拡大します)
百瀬恒彦は、1947年長野県に生まれ、武蔵野美術大学商業デザイン科を卒業。
在学中から現在に至るまで世界各地を旅行し、風景でありながら人間、生活に重きを置いた写真を撮り続けています。
これまでにマザー・テレサなど各界著名人の肖像写真や「刺青」をテーマに撮り、和紙にモノクロプリントして日本画の顔料で着彩した作品を制作するなど、独自の写真表現の世界を追及、展開してまいりました。
今回発表するのは、1990年に百瀬がモロッコを旅し、城壁の街フェズで撮ったモノクロ写真をバライタプリントした約20点の作品です。
古都フェズの旧市街は城壁に囲まれ、街には何百年も前からの生活が残っていました。そしてその街並や光、音、匂いのすべてが百瀬を強く惹きつけたのでした。「フェズの光景にピンとくるものがあった。それまでいろんな旅行をして異文化を見せてもらっていたんだけれど、その少し前からかな、世界じゅうが画一化されていくなかで何百年前からの生活が残っていた。それもいつなくなるかわからないと思って、記録のつもりで写真を撮った」
デジタルカメラが主流となっている現代、あえて昔と同じように暗室で印画紙にモノクロフィルムを焼きつける究極の手作業を行い百瀬が伝えようとしているのは、変わりゆく時代と風景の中で残すべき何か、残したい何か、残っているはずの大切な何か。
砂漠のまん中に超高層ビルが建ち並ぶ今、百瀬が選んだのは、城壁に守られたあの街のあの時。地球グローバル化という渦の勢いは止まりませんが、風景と人間の営みの中に流れ、20数年たった今もきっと変わらずそこにあるものを、写真を通して感じ思い出していただけることと思います。
声
百瀬さんたちとモロッコを旅したのが、もう四半世紀近く前になるなんて信じられません。レンタカーのルノーカトルでサハラ砂漠の入り口まで行きました。夜明けのホテルで、夢うつつに街の塔から流れるコーランを聞いたのが何故か忘れられません。
白から黒へ
黒から白への無限の濃淡に
声がかくれている
祈る声
むずかる声
なじる声
囁く声
声は物音に紛れ
風音に消され
足音に寄り添いながら
ひそやかな歌になっていく
そして砂漠に吸われる
聖歌も無言歌も
あのひとの思い出も
モロッコを旅した仲間の一人は、もうこの世にいません。私の手元にはマラケシュで買ったアンティークのペンとインク壺が残っています。いつかそれで詩を書いてみたいと思っているのですが。
■谷川俊太郎 Shuntaro TANIKAWA(1931-)
1931年、東京都生まれ。詩人、翻訳家、絵本作家、脚本家。処女詩集である『二十億光年の孤独』(創元社、1952年)から『自選 谷川俊太郎詩集』(岩波文庫、2013年)まで、刊行した詩集・詩選集は80冊以上。翻訳家としては1975年に『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞を受賞している他、およそ50種類もの著作を手がけている。 |
|
|
|
|