山田陽のエッセイ「FRESH BREW NEW YORK」 第11回 2011年11月30日 |
そうやってバディがうちにやってきたのは、2010年5月のことでした。ちなみに我が家は、タウンハウスと呼ばれる5階立ての2階なのですが(各フロアに1家族、という具合)、同じビル内の人々も、最初は友達の犬を預かっていると思ったらしく(まさか、2匹目を飼うとは誰も思っていなかったようです。)、かなり驚かれてしまいました…。でも真下の階の人達も、「犬の音はしないし、問題ない」と優しく言ってくれたので、最初から安心して飼い始めることができました。
問題はもうすぐ13歳になるマロとの相性でした。マロもさすがに、この歳でお兄ちゃんになるとは思ってもいなかったようで、ちょっと戸惑っていましたが、特に意地悪することは(最初は)なく、バディもマロが先輩ということをよく理解している様子でした。最初の夜は落ち着かなかったバディですが、2日目からは夜も静かに寝るようになり、すぐにうちに馴染んでいきました。 家のなかではおとなしい犬なので、油断していたのですが、バディはマロがすでに失ったジャックラッセル根性みたいなものをじつは持っていて、リスを見ると大興奮して追いかけるし、大きな犬を見ると吠えたて、落ちているものはなんでも食べようとするなど、いろいろ大変な部分を徐々に発見、こちらも慣れるのに時間がかかりました。なので、バディは絶対に抜けないような体を固定するリーシュを付けて散歩し、向こうから大型犬が来るものならばルートを即変更し、拾い食いをしないようにマズルと呼ばれる口輪みたいなのを外に行くときは着けることにしました。 しかし、今年の正月、バディはまさかの大事件を起こしてしまったのです……。 10年ぶりにお正月を日本で迎えるべく、日本に戻っていた僕たち家族に1月4日、早朝4時に電話が鳴りました。 飛び起きて電話に出ると二匹を預けていたお友達が、取り乱した様子で話しかけてきました。 内容はというと、バディーを家の前のちょっとした庭でお手洗いさせようと外へ出したら、家の柵から飛び出ていき、その前の道を歩いていた3匹のピットブル(闘犬)に迷わずに飛びかかったそうです。もちろんピットブルは防衛本能を出し、3匹同時に噛み返し、噛み返されたバディーは、、、、なす術無く。 その3匹はシェルターの犬だったらしく、連れていた方は慣れた感じで2匹は取り離したのですが、最後の一匹のあごがロックしたらしく全く外れなかった様で、ようやく近隣の人の助けを借りて、外れた時には、バディーの片耳も一緒に落ちました。 その後、お友達はバディーを緊急病院に連れて行き早急に治療をうけさせてくださいました。先ほどの電話はそこからのものでした。 彼らの看病のおかげでなんとか、そして凄いスピードでバディーは回復していきました。その回復度は凄く一番凄いのは彼は全く懲りていないというか片耳なしでも以前と同じように大きな犬には吠え、近所のリスを必要以上に追い回そうと必死です。よほど嫌な思い出が彼には昔あったのでしょうか。 唯一、その時の様子を思い出させるのがバディーの片耳がない事なのですが、初めからなかったごとく、彼は毎日元気に過ごしています。 最近は少し落ち着いたのか、大きな犬にも相手が吠えない限り滅多にほえなくなってきました。 でも拾い食いはやめませんが、、。 (やまだ あきら) ■山田陽 Akira YAMADA 神奈川県川崎市に生まれる。文化服装学院でファッションデザインを学ぶ。1998年渡米。ニューヨークで6年間ブティック、レストラン、プライベートパーティのために高級フラワーアレンジメントを提供するフローラルデザイナーとして活躍。2004年その創造的な関心は「写真」に向けられた。 ポートレートやルポルタージュが『ヴォーグニッポン』や『ヴォーグチャイナ』、『マダムフィガロ』、『ハーパースバザージャパン』、『ウィメンズウェアデイリージャパン』、『カーサブルータス』、『メンズノンノ』、『ギンザ』、『ポパイ』に掲載される。 ポートレートやルックブック(スタイル見本)を撮影し、「デレク・ラム」や「3.1 フィリップ・リム」、「トッズ」、「バンドオブアウトサイダーズ」などのファッション会社と仕事をする。 ファッションやデザインをあらためて学んだことで、どんなものにも美しさを見出し、洗練されたイメージを創り出すようになる。記録や探検、そして、他の文化からインスピレーションを得るために世界を旅する。現在、ニューヨークを拠点に活動。 作者公式サイト http://www.akirayamada.com/ 「山田陽のエッセイ」バックナンバー 山田陽のページへ |
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