すっかり春めいてきた…と思えば雨と共に寒くなり、その後は一気に初夏めいた天気が続く今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか? 先週2018年に入って初めてクーラーを事務所で使わせてもらいました、スタッフSこと新澤です。
今回記事では特定のイベントではなく、美術館そのものの紹介をさせていただきます。
その名もthe Lucas Museum of Narrative Art(ルーカス・ナラティブ・アート美術館)。『スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』の生みの親として世に知られる、ジョージ・ルーカス監督が創立者の美術館です。
とはいえこの美術館は現在建築の真っただ中で、竣工は2021年予定とまだまだ先の話ですが…
設計は世界的に活動し、カナダ・トロント郊外の「アブソリュート・タワー」等の有機的なデザインで知られる中国の建築家集団MADアーキテクツ。今回のデザインも曲線が多用され、創立者のイメージもありまるで宇宙船のように見えます。
内部のデザインも近未来的で、『スター・ウォーズ』の1シーンに登場しても違和感がありません。
美術館は当初はシカゴのミシガン湖のほとりに建てることを予定していましたが、公園保護団体からの反対を受け断念。以来新たな建設地が検討され続けていましたが、先日ロサンゼルスのエクスポジション・パークに建設地が決まり、工事も始まったことで再び世間の話題となりました。
肝心要の所蔵作品ですが、ルーカスと銘打っているものの、展示されるのは彼が手がけた映画関連のものばかりではありません。メインは彼が所有する絵画などのコレクションであり、物語を伝えるというコンセプトに重きを置いているナラティブ・アートと呼ばれる作品群です。
ノーマン・ロックウェル Norman Rockwell
"Happy Birthday Mrs. Jones"
1956年
ノーマン・ロックウェル Norman Rockwell
"Shadow Artist"
1920年
中でもルーカスがコレクションしていることで有名な作家といえばノーマン・ロックウェルが知られています。イラストレータ兼画家のロックウェルは雑誌「サタデー・ナイト・イヴニング・ポスト」の表紙を40年に渡り手掛けたことで有名で、ルーカスは2010年にスミソニアン・アメリカン美術館が開いた展覧会のために友人であり、仕事仲間でもあるスティーブン・スピルバーグと共に多くのロックウェル作品を貸し出しました。その際、CBSのインタビューに以下のように答えています。
「あまりにも多くの画家が感情を入れずに描き、観る人の共感も呼ばない傾向にある。でもスティーヴと僕は、感情に訴える作り手だ。観客の共感を呼ぶが大好きなんだ。ロックウェルも観る人の共感を呼ぶのが好きだった」
ロックウェル以外にもN・C・ワイエスやマックスフィールド・パリッシュ、ハワード・チャンドラー・クリスティなど、誰もが名前は知らずとも作品は知っているような作家から、ルーカス・フィルム傘下のILM(インダストリアル・ライト&マジック:アメリカの特殊効果及びVFXの制作会社)より提供されたルーカス作品のコンセプトアートや、プロダクション・デザイナーハリー・ラングによる「ミレニアム・ファルコン号コックピットの設計図」など、アートファンもシネマファンも建築ファンも楽しめる場所になりそうです。
開館まであと三年、それまでにナラティブ・アートをもっと知り、ついでに経費でロサンゼルスに行けるよう、近隣で開催されるアートフェアに目星を付けなければ!
(しんざわ ゆう)
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