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建築を訪ねて

横河設計工房を訪ねて
新人スタッフI
2018年05月

  小雨の降る5月某日、横浜市仲町台にある建築家・横河健先生の事務所兼、ショップ兼カフェの「THE TERRACE」へ見学に行ってきました。
 参加したメンバーは、植田実先生、前回のツアーでお世話になった阿部勤先生、令子社長、画廊亭主の綿貫、大番頭の尾立、スタッフSこと新澤、そして新米スタッフの私(伊丹)の7名です。>

 

目的地に着くとすぐその外観に圧倒されます。黒くて細長い建物が公園の中に燦然と建っています。公園の中にあるためそのモダンな姿はひときわ目をひきます。

 
扉の先の突き当たりまで45mもあるピロティは通るだけで森林浴でもしているかのような気分になります。このような曇りの日でもある程度の光が差し込んでいたので晴れた日はきっと明るい道になるはずです。


この長い空間があるおかげで公園側から見ると建物が浮いているように見えます。まるで『天空の事務所』。ここでル・コルビュジエのサヴォワ邸が話題にのぼりました。近代建築の傑作として紹介されるサヴォワ邸とこの横河先生の建築を対比させながら見学しても面白いかと思います。

建物は傾斜のある土地に建っていて今回、仲町台駅から来た我々は2階から入りました。公園側から来るとちょうど1階のレストランの入り口から入ることになります。


入ってすぐ、2階の「shop B




ここはインテリアショップになっています。横河先生デザインの家具や書籍、安西水丸、ヘンリー・ミラーなどの作品が並びます。皆、夢中でショップ内を探索しているといよいよ横河健先生(右)が登場。ショップ内のほぼすべての商品、作品を丁寧に解説してくれます。




横河健先生先生デザインのボールペン「Steward」は三菱鉛筆から発売中。


書き味を試す植田実先生と令子社長。なかなか書きやすいようです。
植田先生の利き腕に注目! デザインがとても素敵です。あえて胸ポケットに入れて見せびらかしたいですね。


壁にずらりと並ぶ椅子。「ZEN CHAIR」、「cricri」などの横河先生の名作たち。


試しに座ってみる令子社長と綿貫さん。ちなみに綿貫さんが座っている椅子は日本の桜の木で作られているそうです。駒込はソメイヨシノ発祥の地ということで桜推しです。令子社長、次に椅子を増やすときには是非!


イームズやイサム・ノグチといった著名なデザイナーの本やカタログがセンスよく飾られています。


高宮眞介 建築史意匠講義 ―西洋の建築家100人とその作品を巡る― (アーキシップ叢書01と02) 』という本が置いてありました。よく見ると本の帯に植田実先生の名前を発見!植田先生もお勧めしています。(黄色い方が読みやすいとか。)


横河先生デザインの腕時計The Watchは3種類の文字盤と2種類のバンド色が選べます。左は「03 時を忘れる為の」腕時計だそうで、そのネーミングからうちの画廊にぴったりな気がします。個人的に非常に気になった一品です。


ちなみにこの日、横河先生は01のビジネス向けデザインのものを身につけてらっしゃいました。

 
ジオ・ポンティや吉村順三の美しいデッサンはじめ、黒川紀章先生、若尾文子さんからの直筆お手紙などの展示。黒川先生から別荘の設計を頼まれたなどという驚きの秘話もうかがいました。
これらを見てゆくとその横に見たことのある作品が!


ときの忘れもので開催されたボブ・ウィロビー写真展のマリリン・モンローがありました!オリジナルとエステートとどちらも揃っています。ときの忘れもので見たマリリンと少し雰囲気が変わった気がします。展示場が変わるだけで作品の印象も変わるような気がします。是非見比べていただきたいです。
もっとたくさん紹介したいものがあるのですが書ききれないのでここら辺までにします。


ここで階段を上り3階の横河設計工房・事務所へ。
 
2階のショップが見下ろせるような壁の少ない開放的なフロア。とても会社とは思えないです。


ここが到着時に見た『天空の事務所』。浮いているように見えた部分です。縦に長い廊下がまっすぐのびています。縦長な空間が強調されて広さを感じさせますね。左側には水平連続窓。


奥の会議室も案内していただきました。この窓、実は北向きなのです。横河先生曰く、「こっちは北向きだから他の建築はみんな背を向ける。だけどこんなに緑が豊かなのだからあえて窓を作った。」と。
この素晴らしい景観は横河先生の自然に対する尊敬の念の表れなのかも知れません。



この上にもうワンフロアあって4階は住居も可能なスペースだそうです。今回は入りませんでしたが部屋の説明をしていただきました。

この画像の横河先生の左側には、

横河グループ創業者で横河健先生のご祖父様でもある横河民輔氏の像があります。


横河先生との話に花を咲かせる植田先生。階段脇、日本建築学会賞などずらりと並ぶ賞の数々を見つめる阿部先生。


そして今回は特別に地下の試作品室へも案内していただきました。




地下倉庫のようなものを想像していましたが天井まで高さがあって狭い印象はありませんでした。この上がこの後に行ったレストランの厨房になっているのですがうまい具合に配線を整えたのだそうです。




3つ並ぶこのシーリングライトはmayuの試作品。完成作品は東京・青山の「紀ノ国屋インターナショナル」にもあるそうです。
左が実物。


いよいよ我々は1階のイタリアンレストラン「FRESCO(【旧店名】パークサイドカフェ)」へ
http://darumapro.co.jp/shoplist/fresco.html

オープンキッチンです。

 
ここで横河先生のご紹介で新井今日子先生(左から2人目)もご一緒に。さらに盛り上がります。



このレストランはご覧のとおり壁2面がガラス窓になっています。天気の良い日は窓を開放することもできます。まるで森林の中で食事をしている感覚です。


このデザインは!
先ほどショップにあったcricriに黒いクッションがついています。さすがこんなところまで横河先生の感性がいきています。

 
とても楽しそうに食事する面々。ワインともちもちの生パスタ、とてもおいしかったです。料理はおしゃれで、レストランもガラスとコンクリートのシックなデザイン。しかしながら自然の緑が安らぎを与えてゆったりくつろげる、そんな空間です。後ろに見えるのはオットー・ワーグナーのウィーン郵便貯金局の原寸複製図面。

 
食事の後の紅茶。こちらは横河先生オリジナルブレンドティー
ミルクティーにぴったりです。横河先生曰く「自分が必要と思っているものは、皆も必要と思っている。」


新米の私にとっては2度目となる建築ツアーは横河健先生の設計事務所でした。
かつて、若手社会人や学生が「働いてみたい」と感じるオフィスに投票する「MYCOM オフィスアワード2006」で、この横河設計工房が得票数第1位で大賞に選ばれたことがあるようですが確かに魅力的な空間だと思います。デザインがおしゃれだから、感性を刺激しそうだから、そういう理由もあるでしょう。しかしこの建築の魅力の一つとして「無理がない」ということが挙げられそうな気がします。
緑豊かな景観のいかし方、高低差のある土地をうまく利用した建物構造、ともすれば悪条件と思われるような部分を無理やり人間の都合に合わせずそのまま素材のよさとしていかす。斬新でいて裏には熟慮があるような。無理がないから続く。わたしがこんな考えに至ったのは、横河先生ご自身がおっしゃっていた「建築家は後のことも気になる」という言葉があるからかもしれません。やはり無理がないから居心地がいいのです。前回の阿部勤先生の自邸訪問でも感じましたが名建築の絶対条件の一つは無理がない、ということかなと思いました。


最後にときの忘れものでご購入いただいたマリリン・モンローをバックに集合写真を撮りました。サーモンピンクのシャツをお召しの横河先生を中心に皆、洋服の色が様々でカラフルな一枚となりました。
左から令子社長、綿貫さん、植田実先生、横河健先生、阿部勤先生、新井今日子先生、尾立さん、新澤さん。

(文/いたみちはる、写真/おだちれいこ、しんざわゆう、新人スタッフのいたみちはる)

●『KEN YOKOGAWA landscape and houses

出版年月:2012年02月
出版社:新建築社
著者:横河健
編者:新建築社、横河設計工房、矢萩喜從郎
サイズ:304頁 250mm x 190mm
価格:¥5,000(税抜)




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