建築を訪ねて佐藤研吾「北千住BUoY –ヒトビトとモノモノが重なりある新拠点-」
東京都足立区北千住の墨堤通り沿いにて、アートセンターBUoYは2017年7月からスタートした。
かつての東京オリンピックの年である1964年に建ち、その後URが引き継いだ大きな団地の低層部に併設された、ボーリング場とサウナのフロアを改修することで生まれた場所である。 現在、2階は元・ボウリング場ならではの約600平方メートルという広さを活かしたカフェとギャラリー、稽古スペースに、地下は演劇やダンス公演を行う広い空間になっている。どちらも水道電気等の設備工事はしたが、その他の内装については極力手を入れない形としている。特に地下の廃墟の趣が色濃く充満する広大な空間に惹かれるアーティストが多いそうで、地下の利用は数か月待ちの状態となっているほどに人気を博している。 筆者(佐藤研吾)はこのBUoYの改修設計と施工に携わり、またオープン後も隣接した場所に自分のアトリエを構えているので、一年間ほぼぶっ続けで横でその活動の展開を眺めてきた。最近もっぱら、演劇の状況を作る瞬発力、演者たちの重なり合いによる複数性の魅力に興味津々であるのも、このBUoYに関わったのがきっかけである。先述のように、演劇公演として利用されている地下スペースは、あえて「なにもデザインしない」ことが有効に働いたように思う。ポカンと空いてかつざわざわと環境がうごめく野っ原のような空間のままを残した。そうしたことで、この場所の構成、最終的な設えを劇団が毎回考え、読み解く場として、日毎に絶えず地下空間の風景は変化している。 (フェスティバル/トーキョーさんのツイートより。決まった客席配置のない地下のフロアは、毎回、公演するカンパニーごとにさまざまな工夫によって会場が作られている。) (hiroaki umezawaさんのツイートより。先日開催された「いきかたのリノベーションフェス」の様子。) (田久保柚香さんのツイートより。かつてのダクト配管などはむき出しでのまま、新たに空調設備や舞台照明を吊るバトンと呼ばれる鋼製単管を配置し、特に天井付近は新旧絡み合う複雑な形に。 ) 二階のカフェスペース「BUoY Cafe」はその名前から発想するように、「波にまかせ、海上でたゆたいつつ、錘で海底にしっかり重心を据えている」というそんな両義をコンセプトとして、上質な豆を仕入れて、ドリップの作法はその日ごとに変わるスタッフの感性に任せ、そんな”ブレ“を積極的に取り入れる。 カフェの設えは、そんな異なる人々が入れ替わり立ち代わり同居し、また演劇が備え持つ複数人の重なり合いという状況を、モノの世界でも再演できないかと試みた形となっている。 コーヒーを淹れる人、コーヒーを飲む人、ただそのへんに座っている人たちの傍で、カウンターやイス、そして扉や衝立などが勝手気ままに舞台の稽古か小芝居を催しているような、そんなモノヒトが入り混じる場へ向かっている。 (北千住BUoYさんのツイートより。旧ボーリング場という、長さを生かしたカフェ空間となっている。むき出しのコンクリート躯体に対して、木製家具やカウンターなどの木工造作が配置されている。 カフェの監修は東京・駒込の『百塔珈琲Shimofuri』店長・柴田悠紀さん(ギャラリーときの忘れものからも近いのでぜひ)) (横のアトリエスペースとの間を隔てる、大扉。これは内装屋さんによる建具工事。その上に仕上げ材として木工部品を取り付けている。 photo:comuramai) |
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