瀧口修造 Shuzo TAKIGUCHI 瀧口修造の詩による版画集『スフィンクス』より 利根山光人《妖精の距離》 1954年 リトグラフ イメージサイズ:18.7×19.5cm シートサイズ:29.5×48.0cm 鉛筆サインあり |
妖精の距離 うつくしい齒は樹がくれに歌つた 形のいゝ耳は雲間にあつた 玉虫色の爪は水にまじつた 脱ぎすてた小石 すべてが足跡のように そよ風さえ 傾いた椅子の中に失はれた 麥畠の中の扉の発狂 空気のラビリンス そこには一枚のカードもない そこには一つのコツプもない 慾望の樂器のように ひとすじ奇妙な線が貫かれていた それは辛じて小鳥の表情に似ていた それは死の浮標のように 春の風に捿るだろう それは辛じて小鳥の均衡に似ていた |
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