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2008/2019年 |
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タイトル同様、この作品には長い経緯があるのです。発端は1994年にフンデルトマルク画廊の「ブック・オブジェクト展」へ参加を依頼され、3冊の鍵の掛かった手書きの本を出品したことに遡ります。その後、この物語は改訂を重ねながら、平面作品としてパリのドンギュイ画廊で展示されたり、ナレーションや環境音その他を伴うパフォーマンスとなったり、1997年には神戸国際現代音楽祭で「日蝕の昼間の偶発的物語#1、#2、#3」として、ソプラノやピアノを交えた本格的な室内楽として初演されたりしました。
この物語が何故「偶発的」なのかと言いますと、日蝕が始まると同時に、或るピアニストがバッハのパルティータという組曲を弾き始め、彼女がプレリュードを弾いているときならP, アルマンドに移ったならAを頭文字に持つ単語を多用して紡がれているからです。PならPという文字で始まる単語は沢山ありますが、どれを選ぶかによって、お話しの内容はすっかり変わってきます。ここに綴られた物語は、その時の私の想像力や好みによって偶々選ばれた単語によって具体化されたものだからです。そしてここでは、日蝕や月蝕という天体の現象、パルティータという音楽的な時間、そして不特定の場所で起きる様々な出来事、という三つの層の時間が同時に流れています。 J. S. バッハには6曲のパルティータがありますが、第1番〜3番を「日蝕の昼間の偶発的物語」に、第4番〜第6番を「月蝕の夜の偶発的物語」に当てています。 2008年に豊田市美術館で「日本のアーティスト6人」と題する展覧会が開かれたとき、 この6つの物語に1枚のグランドピアノの写真の拡大・縮小コピーを切り貼りしたイラストと楽譜の一部を添え、一種の絵本として展示し、来場の方々に読んで頂きました。 このアタッシェケース入りの6巻からなる全集は、その時の原稿に手を加えて6部限定のクリアファイル本として作成したものです。(塩見允枝子記) |
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