画廊主のエッセイ
このコ-ナ-では、画廊の亭主が新聞や雑誌などに依頼されて執筆したエッセイを再録します。
綿貫不二夫
PCSについて12 2002年6月21日
(PCS機関誌3号から引き続き駒井哲郎「版画コレクターのために」を引用します。)
デューラーのあと刷りではありますが原版から刷ったものが可成り安い値段です。 ルドンのサイン入りの小さな石版画が日本の大家の小さな油絵よりずっと安く買える のです。驚いたことにはブレダンの最高傑作である「良きサマリア人」がそんなカル トンの間に無造作に入っているのです。値段は4万5千フランでしたから到底買えるし ろものではありませんでしたが僕はびっくりしてしばらく声も出ない有様でした。その石版画が実に刷りもよく白と黒の階調の美しさがなんともいい現すことの出来ない ものでした。僕は十分くらい感動していました。それが店員にも解ったらしく、これ は非常に稀れな貴重な素晴らしいものだといっていました。その版画商にはパリに十 日いるあいだ四日も通いましたが、次の日に又その店を訪ね十九世紀のカルトンを引 き出してブレダンの作品を又見ようとしましたら昨日あった「良きサマリア人」はな くて少し刷りの悪いよごれた刷りの同じ作品がはさんでありました。
ところどころにちょっとインクのたまりがあるのです。でもその作品の良さは殆ど
解るそんなにひどいものではありませんでした。値段は1万5千フラン日本円にして百
万円ぐらいでしょうか。ぼくはその作品をこんどパリへ買いに行きたいと思っていま
す。この作品一点で日本の石版画がもっと良くなるような気がするし、石版画の本当
の良さが蒐集家の方々にも解ってもらえるように思うからです。木版画は日本に大家
のかたがたがたくさんいてほんものがたくさんありますが、銅版画や石版画は未だ未
だ駄目だと思います。第一、作家がグラフィック・デザイナーとグラビュールを混同
して中途半ぱな作品を作っているような気がします。いろいろ問題はあるでしょうが
版画家はすべからく、グラビュールを創るべきです。グラフィックとはちょっとちが
った内面的な仕事を版画家はすべきでしょう。
パリでぼくはアルデグレーベル Heinrich ALDEGREVER(1502-1558?)の小さなビ
ュランを約4万円で買いました。これは誰に見せても恥づかしくない良い作品です。
紙も立派にその当時のものです。版画を買う時には必ず作品の裏を見て紙の保存の状
態や、年代を見きわめるのが常識のようです。
PCSについて13 2002年6月21日 |
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PCSの機関誌第4号をご紹介します。体裁は前号と全く同じで す。 1971年10月発 行、B5判サイズ(25.5×17.2cm)、中に挟み込みが入り6ページです。執筆は3名、ま ず版画家の深 沢幸雄先生の『メキシコの思い出』、挟み込みのオリジナルエッチン グは堀井英男の「夜道」、裏面に堀井さんの 『作品「夜道」によせて』というエッ セイが印刷されています。 5,6ページには会員の中島祐吉さんの『ローマ土産』というエッ セイが掲載されてい ます。<昭和四十年春、日本航 空に勤めて居る婿がローマ駐在となった。>という 書き出しで 始まる中島さんの文章には、半年毎に帰国するお婿さんがローマで買い 入れてきたリトのリストが載っています。 まあ40年近い昔のことだから引用させて いただいても問題はないでしょう。 1.カンピーリ「偶像」55×75cm 約4万円、 2.クラーベ「王様」50×60cm 約4万円、 3.マリーニ「騎士」55×65cm 約7万円、 4.菅井汲「空」55×70cm 失念、 5.シャガ-ル「旧約」35×30cm 約18万円、 6.ミロ「運動」50×75cm 約11万円、 なかなか趣味がいい ですね。 |
PCSについて14 2002年6月25日 | |
引き続きPCS(プリント・コレクターズ・サロン)の機関誌 を紹介します。皆
さんの素晴らしい合の手が励みになります。また北海道(?)の斎藤さんが深沢史朗
のコレクシ ョンについて、連載をして下さるようで、これも期待して下さい。 |