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井桁裕子−私の人形制作
第17回 「奈良・国際彫刻展」 2010年11月20日
こんにちわ!久しぶりのブログ原稿です。
10月26日から11月7日まで、「飛鳥から奈良へ・国際彫刻展2010」に参加させていただきました。
ご来場くださった皆様、またネットなどでご紹介してくださった皆様、本当にありがとうございました!
その奈良の会期中に、私は四谷シモン展の搬出お手伝い+観光で、ポーランドのカトヴィツェという町に出かけていき、10日も居着いて先日無事帰って参りました。
まずは奈良の話を書こうと思います。

〜〜

搬入は25日で、一晩泊まって26日の夜のオープニングレセプションの途中まで奈良におりました。滞在時間が短かったので、あまり奈良の良さを探求できず残念ではありましたが、お会いできた方達と楽しいひとときを過ごしました。
この展覧会は古都・奈良から、現代アートのメッセージを発信しよう!という趣旨で、作家の方達も自ら実行委員となって、2008年の暮れから準備が始まったのだそうです。
すでに昨年6月に「序章」として1回目が行われています。
最初の発案者は彫刻家の竹股桂氏で、イタリアでの彫刻展に参加されてそのあり方に刺激されてのことだったそうです。
今回、私をそこに推薦してくださったのは西田考作さんというギャラリストの方です。
搬入から搬出まで、西田さんにすっかりお世話になりました。
西田さんの静かな佇まいは、まるで奈良の町の良さを象徴するかのように思われました。

持って行った作品は舞踏家・石川慶さんにモデルになっていただいた「Kei-doll」です。
この作品は金属のスタンドで台の上に立てるのですが、この前の個展で出した時は台が小さすぎて、かなり不安定な状態だったのでした。
今回は大きなものを新しく作って、直接会場に送ってもらいました。
板もどっしり分厚く、これで安心のはずですが、現地に着くまで実物を見られません。
25日の朝、出発直前まで実に慌ただしく、どうにか新幹線に乗ってお昼過ぎに奈良に到着、待ち合わせをしていた西田さんとお会いしました。
お昼をご馳走になり、その後会場の「名勝・大乗院庭園 文化館」へ。
小雨のぱらつく天気ではありましたが、美しい景色でした。
会場の写真をごらんください。


文化館の、階段をあがったところに渡り廊下のような空間があり、その突き当たりが私の場所です。




実は組み立てるにあたって肝心のドライバーを忘れてしまいました。
また注文した台にはスタンドをねじ止めする穴を開けるためのドリルを用意していなかった...
「ときの忘れもの」ではなくて「奈良でも忘れもの」です。
しかし、西田さんにドライバーをお借りして(ねじ穴についてもまあどうにか力技で穴を開けまして)、ともかく夜にならないうちに組み立てが終わりました。

宿は、楽しみにしていた「奈良ウガヤゲストハウス」でした。
4人部屋で、寝台列車のように二段ベッドがカーテンで仕切られているのです。
たった一人で個室に泊まるビジネスホテルは寂しいものですが、見知らぬ人とはいえ誰かの気配を感じながら眠るのは心暖まるものでした。

〜〜
翌日は美しく日が差して、町歩きには絶好の日よりでした。訪ねてくださった方と携帯で連絡をとりつつ、案内してもらいながら歩く間になんとなく道も覚えました。
第二会場では先述の竹股さんの作品もありました。すぐに個展があるのでここには大きな作品はなく、手で持てる大きさのものが一つだけ柱にかけてあります。それは触ってかまわないとのことでした。
古木に、ナイロン弦がゆるーく一本張られています。これは「楽器」なのだそうです。
耳を澄まし、弦を押さえながらはじくとなんとなく音階が微妙に出なくもない.....という心許なくまた心やさしい作品でした。

会場の外では正倉院展が開催中で、阿修羅像なども公開されており粘って並べば拝観できたのですが、どこも行列が長く、あっさりあきらめてしまいました。
東京に阿修羅像が展示されたときにも行かれなかったので惜しい気はしましたが、私はむしろ路上を闊歩する鹿のほうが気になっていました。
奈良といえば鹿ですが、私はなんとなく、公園の一部の空間に鹿たちが閉じ込められて暮らしていると思っていたのです。
しかし、現実には鹿たちはそのような失礼な扱いをされてはいませんでした。野生の鹿は、奈良市民と同じようにあちこち散歩しているのです。もちろん鹿は用事がないので繁華街などにはやってきません。おおむね広々した公園にいます。
しかし昼間は人で賑わっていた歩道にも夜が来て、やがて町が目覚める頃には、そこに鹿のフンがてんてんと落ちていたりするのだそうです。
このような事は奈良をご存じの方にとっては当たり前なので、めずらしげに書くほうがおかしいと言われそうですが.....。
しかし、ペットではない動物が当たり前に一緒に生活しているという豊かな空間、これを初めて体験した人は必ずや少し感動するはずです。


夕日の中、美しい奈良ホテルで、訪ねてくださったお客様にお茶をご馳走になって会場に戻りました。
夕方からはオープニングパーティーです。
他の出品者の皆さんともお話しできるチャンスだったのですが、私はもう東京に戻らなくてはなりません。
西田さんをはじめ、何人かの方と慌ただしくお別れを惜しみ、一路東京へ。
その後、展覧会そのものも好評で、私の作品を探しに来てくださった方も何人かおられたと伺いました。
遷都1300年の記念行事でしたが、今後も定期的にこのような展覧会が開けたら良いと、私も心から思いました。

〜〜
翌日からすぐ、前回書いた映画の人形のほうの準備にかかる予定でした。
ところがなんとその帰宅した日に「悪天候のため撮影延期」という連絡が入りました。
延期、といってもそれが簡単な話ではないことは私にも判ります。
しかし、いくら心配しても私には何もできず、ともかくこの先は連絡を待つしかありません。

ポーランドでの四谷シモン展は10月31日で終了してしまいます。
私は映画の日程が重なってしまってそれには間に合わない予定でした。
すっかり終わった3日に現地到着、その日だともう運び出す直前です。
梱包の具合を確認するくらいしかできない時点での現地入りとなるので、心苦しく思っていたのです。
が、飛行機の予約がまだ済んでいないことがわかったので、先方にお願いして、急遽出発を早めてもらいました。
帰りはそのぶん早く帰って奈良の搬出に間に合うかと思ったら、もう帰る飛行機は早い日程が取れないとのことなのです。観光のため、仕事の後もしばらく滞在させてもらうことになってはいました
が、帰りが変更無しだと結局10日も滞在することになってしまいます。
あちらではいろいろお世話になるわけだから、そんなに居座ったら悪いのでは......という考えもよぎったのですが.....航空券について即断しないといけなかったので、もう、それでお世話になることにしました。
こんな素晴らしいチャンスは二度と無いかもしれません。
なんといっても、5年越しで行きたいと思っていた所でしたから、不安より期待の方がずっと大きいのでした。
結局31日午後に成田を発ち、時計を逆回ししながらその夜のうちにワルシャワに着き、まだ顔も知らない「Kubaさん」に迎えに来てもらうことになりました。

会社員時代は、お金はいくらかありましたが時間がありませんでした。
仕事以外の時間は全部、制作に費やしていたのです。
たまに出かける場合にも、いつも必ず頼りになる人がいたので心配ありませんでした。
どうも私は抜けていますので気を引き締めて、事故の無いようにしなくては、と思いました。
しかし飛行機が離陸してから急に不安になったのが、「旅行保険に入るのを忘れた」という大問題でした。
東京に居てさえ事故に遭う私が、どうしてそういうことをするのでしょうか。
まったくなっていません。

〜〜
また長くなってしまいました。
展覧会の成り立ちやカトヴィツェの詳しい話を書き出すと止まらないので、次回に書くことにいたします。
また20日の予定です。どうぞよろしくお願いします。
その頃はもう年末ですね.....。(いげたひろこ)


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