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尾形一郎・尾形優のエッセイ「ナミビア」
第1回 ナミビアへ  2011年3月10日


 昨年は、メキシコの教会建築をテーマにした「ウルトラバロック」展に多数の方々に来ていただいたことを感謝します。
 
 さて、世界の辺境に異文化衝突の痕跡を訪ねるシリーズの第二弾。
 今年はアフリカのナミビアに放棄されたゴーストタウンを撮影した作品を見ていただこうと思う。
 ナミビアは地図でいうと南アフリカの左上にあり、国土の大部分が砂漠に覆われ、人口密度の極端に低い国。
 この国に100年前のドイツが残したゴーストタウンがあるのを知ったのは2002年のことだ。南アフリカのサファリを撮影に行ったとき、現地の書店で砂に埋もれたドイツ風の家の写真を見つけた。砂漠の中に、ミュンヘンあたりの風景が埋もれてしまったような不思議な風景だった。
 帰国後、その場所がアクセスの難しいこと、砂嵐の日が多いことなど、詳細に調べて翌年の2003年から2006年にかけて3回、8x10の銀塩カメラを担いでこの地を訪れた。
 最初の撮影はクアルンプールで乗り換えてヨハネスブルクまで行き、そこからナミビアの首都ウイントフックまで定期便で飛んだ。到着した飛行場は国際空港なのに閑散としていて、私たちの乗ってきた機材以外は何も無さそうだったが、よく見るとオンボロのセスナ機が一機置いてあるのが見えてきた。
 このオンボロ・セスナこそが、私たちが日本から予約していたナミビア国内の移動手段だ。パイロットがデブだからか、私の機材が重いのか、オンボロすぎるのか、理由はどれにせよ、なかなか機体が上昇せず、何度も降下してしまう。やっと上昇してもフラフラしていて生きた心地がしない。それでもなんとか機体を立て直したところで、若い2人のパイロットが「イエ〜イ」と親指を出して祝った瞬間が、私たちにはナミビア一番の思い出となっている。
 とにかく風の強いところなのだ。この風には撮影中もずっと悩まされた。部屋の中なのに砂嵐が襲ってくる。フィルムには砂の微粒子が水のように入り込んでくる。日本に帰って現像したら、砂で穴だらけのフィルムもたくさんあった。
(おがたいちろう・おがたゆう)

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