2001年6月〜9月の展覧会

[ 第 1 1 回 瑛 九 展 − 油 彩 と 版 画 ]
会期…………2001年 6月15日(金)〜 6月30日(土)11:00〜19:00 日曜・月曜・ 祝日は休廊
概要…………NHKの新日曜美術館で何度目かの特集が組まれたり、没後41年を経 て、しかも抽象画という一般的にはとっつきにくい作品でありながら、各地の美術館が毎年のように回顧展を開催している瑛九(今年3月には千葉県立美術館で銅版画展が開催されたばかり)という作家の魅力は何なのでしょうか。
ときの忘れものでは、1995年の開廊以来、今回で11回目の瑛九展を開催します。瑛九は早熟の天才でした。明治以来、多くの画家たちが求めて尚、達成できなかった 「光と色彩の画家」でした。15歳のときには『アトリヱ』『みづゑ』など美術雑誌に 評論を執筆し、早くから写真に取組み、1930年代にはカメラを使わず印画紙に直接光をあてて感光させる「フォト・デッサン」を創始します。晩年には遂に油彩点描によ る独自の抽象画を完成し、亡くなるまで日本の前衛美術運動の最先端にいた作家でした。
自由なる精神にこそ自由な表現が宿るという信念を生涯貫き、様々な技法や、表現形態を貪欲に模索し、出来上がったスタイルに安住することなく、短い生涯に、実に多くの作品を制作しました。
油彩は 600点余りが確認されています。フォトデッサンは恐らく 2,000点以上が制作されたものと思われます。銅版、リトグラフ、木版などの版画作品は約 500点。その他、鮮やかな水彩作品も数多く残しています。
1997年に日本経済新聞社から決定版『瑛九作品集』が刊行され、その全貌があきらかになり、益々その評価が高まっています。今回の「第11回瑛九展−油彩と版画」には、『作品−B(1935年 油彩)』、『窓 (1957年 油彩)』『昼の輝き(1958年 油彩)』など、1930年代の初期から1950年代の晩年までの油彩代表作と1950年代に集中して制作された版画作品、あわせて20点を出品します。
瑛九(Q Ei えいきゅう 本名・杉田秀夫)………1911年宮崎生まれ。1936年フォトデッサン作 品集『眠りの理由』を刊行。1937年長谷川三郎らと自由美術家協会創立に参加。戦後は既成画壇を 批判して、1951年デモクラート美術家協会を結成、靉嘔、池田満寿夫、磯辺行久、河原温、細江英 公ら若い作家に大きな影響を与えた。油彩、フォトデッサン、銅版画、リトグラフなど、さまざま な表現方法に挑 み、それぞれ独自の世界を生み出す。1960年48歳で死去。
瑛九「窓」油彩・布 45.5×38.0cm
[ 和 の 悦 楽 − オ ブ ジ ェ ・ 屏 風 ・ 軸 ・ 器 ]
会期…………2001年 7月 6日(金)〜 7月21日(土)11:00〜19:00 日曜・月曜・祝日は休廊
概要…………さまざまな国のデザインに日常を囲まれている現在、日本的であるということは何に依拠しているのか、自分は果たして日本人的であるのかといったことがますます不鮮明になってきています。今回出品される器、屏風、軸といった、「和」に分類されるものが、現代作家の手にかかり、違和感と親和感のはざまで作品が存在し、それによってあやふやになりつつある「和」が明確に説明されるといえるでしょう。
また、現代美術の所有者(今回は画廊主)が、所蔵作品を作家本人さえも予期しなかった屏風や軸という伝統的な「和風」に仕立て直すことで、「和」がもつ装飾の面白さにも注目していただければと思います。オブジェ、屏風、軸、器など「和」に拘った作品30点を出品いたします。
出品作家=ウォーホル、芹澤金圭介、駒井哲郎、加藤清之、内間安瑆、森村泰昌、安原喜明、速水史朗、山田光、井上翠、靉嘔、リキテンシュタイン、J.ジョーンズ 他
R.リキテンスタイン「Still Life with Crystal Bowl」シルクポスター 屏
風サイズ 176×170cm
山中現「At night」木版 Ed.30 25×20cm 1985 軸装サイズ 110×41cm
R.リキテンスタイン 「M……Maybe」 シルク・ポスター 屏風サイズ 171×187cm
[ ダ グ ラ ス ・ ダ ー デ ン   反 規 範 的 建 築 展 ]
会期…………2001年 7月27日(金)〜 8月11日(土)11:00〜19:00 日曜・月曜・ 祝日は休廊
概要…………今年 1月に弊廊の企画展「紙の上の建築展」に続いて、ダグラス・ダーデンの「反規範的建築」と題された連作版画による企画展を開催いたします。
1980年代、衝撃的に出現したダグラス・ダーデンは、世界中を巡回したドローイング展において、自身が設計した建築作品を通して建築の本質を論理化してみせました。「建築家が建築すること」の意味を以下のように、明解に提示しました。
「考察の価値ある建築物はすべて、作者の個人的な告白である。偉大な建築物は、意図されておらずとも重要な意味をもつひとつの伝記である。……建築は、主張を築き上げることである。つまり、生を故意にあるかたちに嵌め込むことによって、自らの考えを表わそうとする、建築家による「作者の権限」の表明である。建築物は、建築家の名にか特定の意味を強調する必要性を表している。メモ帳に記すように、建築家は建築物の内外に、自らの原動力、本能、希望、意志をひとまとまりにして書き込む。
建築はしたがって、修辞を容認するものであって、知識へと駆り立てるものではない。建築は、論証でなく、イメージを与える。言明をせず、寓意を与える。建築家は建築物を設計することにより、我々に、人生に対する姿勢と生きることの意味を与えることを要請する。」そして、宿舎、寺院、住宅、博物館、学校といった設計プロジェクトを通して、「意味を構築するということは、その一部を破壊するということであるということ−−この世の中で何かを提示するためには、そのイメージに何らかの損傷を与えざるを得ないということ」を説き明かしていきます。それによって変容したイメージは、暫定的な表皮で覆われることとなりますが、この暫定的な表皮を作るのが、「建築の背後にある衝動」であり、この表皮の構築作業こそ、「我々の稀薄な現在を越える、継続的な組織を形成することを目指した」建築行為だと導いています。
 DOUGLAS DARDEN(ダグラス・ダーデン)………1951年アメリカ、コロラド州デンバ ーに生まれる。1976年ニューヨークのパーソンズ・スクールで、デザインを学ぶ。1983年ハーバード大学大学院を特別優等賞を得て卒業。以後、ハーバードとコロンビア大学で設計指導にあたる。1988年ローマ賞受賞、一年間ローマのアメリカン・アカデミーで研究。1990年よりコロラド大学客員教授。1983年より、ニューヨーク、シカゴ、ワシントンDC、オスロ、東京、大阪等世界中で、理論的なドローイング展を催 す。1992年シカゴでドローイング展、プリンストン出版社より作品集を刊行。
ダグラス1 ダグラス・ダーデン 《Past the present: Ten Works》より 1987年 
42.9×67.5cm Ed.300
ダグラス・ダーデン 《Past the present: Ten Works》より 57.3×44.2cm Ed.300
[ エディション作品展]
会期…………2001年 8月24日(金)〜 9月 1日(土)11:00〜19:00 日曜・月曜・祝日は休廊
概要…………弊廊、ときの忘れものは、1995年6月に第一回展「銅版画セレクション 白と黒の線刻」を開催し、以来この6月でまる6年を迎えました。弊廊では、毎月の企画展を開催することと同時に、つねにエディション企画を進めてきました。
1995年6月「小野隆生銅版画集1995」1995年10月難波田龍起銅版画集「古代を想う」
1996年12月小野隆生銅版画集1996「きょうもレコードの雑音だけが聞こえる」
1997年5月難波田龍起「生物苑」
1998年4月安藤忠雄「Tadao Ando Prints 1998」、1998-99年磯崎新連作画文集「栖十二」、
1999年1月磯崎新「闇」 「霧」 「影」各シリーズ、1999年3月版画掌誌「ときの忘れもの」第1号/小野隆生(リトグラフ)・三上誠(銅版画)1999年7月小野隆生石版画集「壱千九百九拾九年」1999年9月磯崎新銅版画集「栖十二」
2000年3月版画掌誌第2号/磯崎新(銅版画)・山名文夫(シルク)、2000年9月版画掌誌第3号/草間彌生(シルク)、
2001年4月より10年計画で始まった磯崎新連刊画文集「百二十の見えない都市」
これらエディション作品のなかから、難波田龍起、草間彌生、小野隆生、安藤忠雄、磯崎新らの作品20点を出品いたします。
安藤忠雄「ベネトン・アートスクール・」1998年 シルクスクリーン 60×120cm(紙) Ed.35
[ 根岸文子新作展]
会期…………2001年 9月7日(金)〜 9月22日(土)11:00〜19:00 日曜・月曜・祝日は休廊
概要…………スペインで制作を続ける根岸文子の新作展を開催します。根岸文子は、1993年にスペインに渡りスペイン美術大学の版画工房で学び、その後もスペインに住み、銅版、油彩の制作を行っています。1999年9月、ときの忘れもので行った日本での初個展以来、2年振りに新作が届きました。「ISLA(島)」「LUNA(月)」「DIA(日)」、そして火山や川といった人間の前に自然と存在するそれらをテーマに、平面上に不思議な浮力をもって浮かびあがらせ、スペインの明るい陽射し、乾いた空気がふと感じられるような、軽やかな色彩で描いていきます。マアルコス・リカルド・バルナタン氏(美術評論家、エルムンド新聞)は彼女の作品をこう評しています。
「スペインでは、彼女の仕事は、現代美術上、東洋からの宝物に見える。しかし、日本側からは、制作した土地の独特な光や空間に影響をうけた新しい風景として目にうつるのではないかと思う。異国での旅での「秘」、新しい遠景の発見が彼女の作品のもつ「瞬間」からわきでる。作品のもつわびの世界は禅の精神にみられるラコイズモがあり、このすばらしい美味は、私達を感嘆させてくれる短歌や俳句の簡潔で的確な一節に似ていて、この創造力の中に作家の直感を見い出すことができる。」
日本人としての精神をスペインの光や風にさらし、自分でなければならないことを問い続け、銅版におとしこみ展開させる根岸の今回の新作展では、銅版画30点を出品いたします。
根岸文子………1970年東京生まれ。1993年女子美術大学絵画科版画コース卒業。同年スペインに渡る。スペイン美術大学の版画工房で学ぶ。スペイン国内版画展/新人賞、モハカ絵画奨学コース(スペイン)等を受ける。海外では、セントロ・デ・ホーベン(マドリッド)、ギャラリー&エディション・ギンコ(マドリッド)、等で個展を開く。日本での初個展は1999年9月ときの忘れもので開催。現在スペイン在住。
根岸文子「IVOLCAN」2000年
銅版 49.5×33.0cm Ed.30
根岸文子「ISLA, LUNA」2000年
銅版 49.8×33.0cm Ed.30




【TOP PAGE】