建築を訪ねて辻邦生展〜磯崎新〜坂倉準三のレストラン 軽井沢高原文庫
「辻邦生展〜豊饒なロマンの世界〜」 2009年7月18日[土]−11月3日[火] 8月22日には、夫人の辻佐保子先生と、友人であり、辻先生の山荘の設計者でもある磯崎新先生の対談があり、磯崎親衛隊としては万障繰り合わせて行かずばなるまいと、師匠の植田実先生と、ときの忘れものの磯崎番の尾立麗子と亭主の3人で、軽井沢に行って参りました。 高原文庫は軽井沢タリアセンという観光施設の一郭にあるのですが、お昼頃着いたので、食事がてら園内の湖水の周辺に移築された歴史的建造物をいくつか見てまわりました。 1974年に磯崎新設計により竣工した群馬県立近代美術館が、33年ぶりに全面的な改修工事を行い、リニューアルオープン。 現在は、深沢紅子野の花美術館、レストラン・ソネットとして運営されています。 深沢紅子先生は、私が少年の頃、堀辰雄や立原道造らとの交友やその挿絵などによって知った憧れの画家でした。その頃はまさか一緒に仕事をできるなんて思いもしませんでしたが、後年現代版画センターをつくった時、盛岡第一画廊の上田浩司さんに連れられて練馬のアトリエに伺い、素晴らしい花の版画集「やさしい花」をつくっていただきました。 こちらが、その版画集です。
論客のお二人がこもごも故人の思い出を、そしてお二人の別荘が隣り合って建つ経緯を興味深いエピソードを交え語られました。 実は、両先生とも体調が悪く、それを知っていた私たちは気がきではなかったのですが、参加者からの質問にも丁寧に答えられ、対談は2時間弱続きました。磯崎先生は体調不全のためそのまま東京にとんぼ返り。 さて、私たちはというと。朝の新幹線の中で、 亭主「ところで今晩はせっかくですからどこかうまい所で食事しましょう」 植田「坂倉準三が戦前に建てた飯箸邸という木造住宅が軽井沢に移築されてレストランになっているらしいんだけど」 亭主「えっ、坂倉準三ですか。それ行きましょう」 植田「でもン万円もするらしいし、レストランの名前も場所も知らないし、たしか有名なシェフだったと思うんだけど・・」 尾立・それを聞いた途端、携帯を取り出し何やらピコピコ。あっという間にそれが追分にある三國清三シェフが手がけたフレンチレストラン「ドメイヌ・ドゥ・ミクニ 」であることを突き止めた。いやまったく文明の利器とは凄いもんですね。 ディナーも9,000円からということで、ここは奮発して予約。 その一画にあるドメイヌ・ドゥ・ミクニ 。 亭主「これ、等々力の今泉先生の家にそっくりですよ」 植田「ふーン、で誰の設計なの?」 脇でそれを聞いていた支配人「この建物の旧所有者は今泉篤男という方ですが」 えー! さっき何となく感じた懐かしさはそれだったんだ。 新幹線の中で最初に「飯箸邸」と聞いていたので、気がつかなかったのですが、美術評論家で京都国立近代美術館の初代館長だった今泉篤男先生は生前、等々力に広い敷地に建つ素晴らしい木造住宅にお住まいでした。 そのことは、今泉先生ご自身が『「家の精」について』という文章(『大きな声 建築家坂倉準三の生涯』所収)で書かれています。<>が引用です。 ・・・・・・ <どういうめぐり合せか、私の現在住んでいる等々力の家は、坂倉準三の初期の作品である。坂倉君がパリの万国博に日本館を建てる仕事を済ませて日本に帰り、最初に没頭したのが、この家の建築だったらしい。私どもー坂倉や富永惣一やーは大学で団伊能先生に西洋美術史を教わった。(中略)その団先生が、坂倉君に依頼して建てられたのがこの等々力の家で5,6年前それを団先生から割愛していただき、今私が住んでいるというわけなのである。(以下略)> ・・・・・・ このことは私も知っていたが、「飯箸」という名はどこにも出てこないので、わからなかったわけだ。 今泉先生の生前に私はこの家を訪ねている。 没後はお嬢さんご夫妻がお住まいになっていた。
夕暮れが迫り、いよいよ食事。この夏一番の贅沢な時間が静かに流れて行きました。 (でも領収書みたら社長が怒るだろうなあ) 磯崎新のページへ 軽井沢高原文庫 ドメイヌ・ドゥ・ミクニ 「建築を訪ねて」バックナンバー |
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