光嶋裕介のエッセイ 第4回 第四便:『彫ることと描くことの違い』(IV/VIII) 2012年3月22日 |
鉛筆やクレヨンを持って
白い画用紙に絵を描くことは、 子供の頃から好きだった。 そして興味のあった銅版画を数年前からはじめた。 針を持って、 銅の板の上でカリカリ線を彫ることは 全く新しい体験だった。 彫ることと描くことは、似て非なる行為である。 持っている道具は違えど 利き腕の右手を使って やっていることを見る分にはそっくりだ。 だけど、感触が全然違う。 率直に言うと抵抗力の違いだろう。 ペンのインクが紙に吸い取られ、 線が現われるのはプラスの感覚であり、 銅版画の彫っている感覚は、 物質に対してマイナスの働きをする。 この違いは大きい。 建築は何かを構築することが多いが、 彫刻や彫刻のように何かを削り取っていく行為に、 僕は建築家として無意識の内に惹かれているのかもしれない。 それはアルベルト・ジャコメッティが極限まで 人体をそぎ落としたようなものに対する強い憧れなのかもしれない。 (こうしま ゆうすけ)
■光嶋裕介 Yusuke KOSHIMA 建築家、一級建築士。1979年米国ニュージャージー州生。87年に日本に帰国。以降、カナダ(トロント)、イギリス(マンチェスター)、東京で育ち、最終的に早稲田大学大学院修士課程建築学を2004年に卒業。同年にザウアブルッフ・ハットン・アーキテクツ(ベルリン)に就職。2008年にドイツより帰国し、光嶋裕介建築設計事務所を主宰。2010年に桑沢デザイン研究所、2011年に日本大学短期大学部にて非常勤講師に就任。 光嶋裕介公式サイト:http://www.ykas.jp/index.htm 「光嶋裕介のエッセイ」バックナンバー |
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