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光嶋裕介のエッセイ
第6回 第六便:『アクアチント』(VI/VIII)  2012年4月22日
銅版画(エッチング)は、
銅板に醤油のような防食剤のグランドを
まんべんなく敷いてコーティングするところから始まる。
それを削り取るようにして
針で彫っていくと、銅が少しずつ露出してくる。
そして、絵柄が完成すると、
酸の液体の中にドボンと銅板をつけ込むことで腐食させる。
一定の時間が経って、桶から銅板を取り出すと、
腐食が綺麗にすすんでいるため、
そこにインクを詰める。
インクの入った銅板の上に濡れた紙を置いて
プレスすると美しい線画が浮かび上がる。
この時点では、
まだ僕の彫った幻想都市風景は昼の風景である。

そこで「アクアチント」作業がつづく。
エッチングを終えた銅板に粉末状の松脂を振りかける。
うっすら白くなったら板の裏から熱することで松脂を定着させると、
銅板を半分保護して、半分露出している状態が生まれる。
そこでまた酸の中につけ込むことでざらざらした質感の腐食をさせる。
腐食させたくない部分には
最初に使った保護材であるグランドを塗って守っておく。
このときに腐食剤である酸の桶の中に入れる時間が
濃淡のニュアンスに大きく影響するので、すごく重要になってくる。
これにより、
エッチングで彫られた線画に淡いグラデーションが生まれ、
幻想都市風景は、夜の表情を獲得するのである。
(こうしま ゆうすけ)

光嶋裕介
「Landscape at Night NO.015」
2011年
エッチング、アクアチント
イメージサイズ:12.0x30.0cm
シートサイズ:27.0x39.5cm
Ed.VIII+20
サインあり

光嶋裕介
「Landscape at Night NO.015 bis」
2011年
エッチング、手彩色
イメージサイズ:12.0x30.0cm
シートサイズ:27.0x39.5cm
Ed.1
サインあり

光嶋裕介 Yusuke KOSHIMA
建築家、一級建築士。1979年米国ニュージャージー州生。87年に日本に帰国。以降、カナダ(トロント)、イギリス(マンチェスター)、東京で育ち、最終的に早稲田大学大学院修士課程建築学を2004年に卒業。同年にザウアブルッフ・ハットン・アーキテクツ(ベルリン)に就職。2008年にドイツより帰国し、光嶋裕介建築設計事務所を主宰。2010年に桑沢デザイン研究所、2011年に日本大学短期大学部にて非常勤講師に就任。
光嶋裕介公式サイト:http://www.ykas.jp/index.htm

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