尾形一郎のエッセイ 第2回 「興味・視点」 2010年6月5日 |
メキシコにしても、日本にしてもそうなのだが、世界の辺境の地に西欧文明がやってくると、その辺境にもともとあった文化と西欧近代の衝突が起こる。私たちは、その衝突が起きたときに出来た奇妙な建築やプロダクトに興味をもっている。そういう奇妙なものや形に、何かかけがえのないものが宿されているような気がしているからだ。
世界の辺境には近代社会が排除してしまった価値が残されている、みたいな部分はレヴィストロースに通じるかもしれないが、むしろ自分たち自身が、日本というユーラシア大陸の端の住民であることが重要だと思っている。日本はメキシコより西洋化が遅かったから、近代文明にとってたいへんな辺境だともいえる。東京も昔からの土着的な感性と、西洋から輸入した近代的な思考がぶつかってできた不可思議なもので溢れかえっている。だから日本から世界の他の地域の辺境を眺めて、これはどういうことなのだろうか、どういう価値があるのだろうか、と考えたいのだ。 中心へ向かわないこと、辺境であり続けることを善しとしているので、結論みたいなことは永久に出せないし、世界に中心とか正統とかが無いことを示したいとも言える。西欧人とか中国人のような中心にいる思考の人たちや、中心に興味の向いているタイプの日本人とは視点が逆さまになっていることもあるだろう。しかし、そういうことを発見することも創作の楽しみなのだ。 (おがたいちろう)
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