建築を訪ねて新緑の山口文象邸でコンサート 日本の近代建築運動のリーダーのひとりで、モダニズム建築とともに林芙美子邸(新宿区/現存)など和風建築にも優れた建築を残した山口文象の自邸(1940年竣工/現・クロスクラブ)で山口勝敏さんのピアノ・オルガンのコンサートが、5月22日(土)、23日(日)、30日(日)の三日間開催されました(各回13時開場)。
亭主が1993年に編集した展覧会図録『銀座モダンと都市意匠 今和次郎、前田健二郎、山脇巌・道子、山口文象』(監修:藤森照一、植田実)のために、都内に残る住宅作品はじめ、富山の黒部川第二発電所までかけめぐったのは楽しい思い出ですが、久しぶりに素晴らしい庭を持つ山口文象邸で午後のひとときをお茶とケーキをいただきながら音楽を楽しみました。以下は尾立麗子のレポートです。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 東京の住宅街・久が原の山口文象邸(1940年)で開催された山口勝敏さんのコンサートを楽しみ、近代建築運動の指導者のひとりであった建築家の自邸を見学させていただくという贅沢なツアーを新緑の美しい5月22日に行ないました。
山口勝敏さんによるピアノとオルガンのコンサートは、山口邸内のサロン「クロスクラブ」で行われました。晩年に洗礼を受けた山口文象さんがつけられたサロン名で、十字架の「クロス」と、人々が交じりあう「クロス」を掛けた意味あいがあるそうです。 山口勝敏さんの作曲したピアノ曲は、体が溶けてしまいそうなくらい優しいメロディーでした。オルガンの音は懐かしい音色で、とても贅沢な時間を過しました。
コンサートの後は、ナビゲーターの植田実先生を囲んで勉強会です。植田実先生は18歳の時から2年ほど、山口邸の付属棟に居候していたそうです。 例によって植田先生は詳細な略歴はもちろん、竣工以来、増改築を繰り返したプラン(絶えず変化する住宅)、航空写真など豊富な資料を用意して参加者に配布してくれました。 台所の位置や部屋の間取りなど、幾度となく増改築が繰り返されたそうです。植田先生が居候していたときは、庭に子供部屋が三軒建っていたそうですが、今はもうありませんでした。 自宅にプールがあるという、羨ましい環境です。このプールで、山口文象さんはバシャバシャ泳いでいたそうです。
外観は、斜面になっている瓦屋根が、1階に重く圧し掛かっているような重厚感のある印象で、中に入ってみると、玄関や出入り口、天井高やキッチン等々、様々なもののスケールが、今の住宅にあるものより少し小さめに作られていました。一見、日本風の民家のようでもあり、その中に西洋のお家を思わせるようなインテリアがたくさん施されてあります。和も洋も積極的に取り入れ、その融合が新しさを感じさせる素敵な住宅でした。1940年に建てられたというのは、ほんとうに驚きです。 今後もこのような建築ツアーを計画したいと思いますので、どうぞご参加ください。 (おだちれいこ) 「建築を訪ねて」バックナンバー |
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