28日、29日と二日間のセールにはたくさんのお客さまにご来場いただきありがとうございました。
前日まで「銀塩写真の魅力」展を開催していたもので、準備が慌しく、まだ値付けもしていないうちに次々と来廊者が相次ぎ、てんてこ舞でした。
ちょっと意外だったのは若い人たちが多かったことです。
私たちの仕事は、作家の創ったものが次の世代に引き継がれることをお手伝いすることですが、私どものような古色蒼然とした画廊に若い人たちが来られることは何だかとても嬉しい。
突然話は変わりますが、福井県は私たちにとって非常に大切な場所です。
現代版画センター以来のお客様が多数いらっしゃって、今まで何十回も訪れました。
福井が全国でも有数の現代美術の発信地であることは、ふるくは大正時代、土岡秀太郎さんが北荘画会を結成して以来、多くの前衛作家たちが福井を訪れていることでも明らかです。戦後の1950〜60年代には久保貞次郎先生の影響で創美運動が熱気をもって展開され、鯖江の木水育男さんを中心に、福井、大野、勝山などの人たちが頒布会を組織して晩年の瑛九を支えたことは余りにも有名です。
先日、もう30数年のお付き合いになるAさんから下記のようなメールが入りました。
**********
さて、4月に福井市にオープンしたE&Cギャラリーの3回目の企画展として「駒井哲郎版画展」を開催する運びになりました。期間は6月27日より1か月です。
このギャラリーは福井大学の美術の先生方が中心となり、福井での芸術文化の発信の場とするもので、NPO法人としての運営です。学生たちがギャラリーの運営を担っている、ユニークな画廊です。詳細はWEBサイトで見てください。オープニング企画は「宇佐美圭司展」でした。
つきましては、綿貫さんには急なお願いで申し訳ありませんが、ギャラリー発行のニュースレター、および駒井展の案内ちらし用として駒井哲郎の現代版画・現代美術における位置づけ、また、駒井版画の魅力について600字程度(少し増えても問題ないと思いますが)でまとめていただき、今週中にメールいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
出品作品については小生のコレクション20点で構成することになりました。
出品作品リストを添付しておきますので、ご参考に願います。
また、ギャラリートークもやろうと(中略)、小生ももちろん参加しますが、だれか熱く語れる人がいないかと考えますと、綿貫さんにぜひと考えた次第です。(以下略)
***********
とまあそんなわけで、セールの準備や何やかやでてんてこ舞の毎日だったのですが、古いお客さまのリクエストとあらば何とかせねば。
原稿を書いて送り、例によっておっちょこちょいにもギャラリートークまで引き受けてしまいました。
『駒井哲郎版画展ーA氏コレクションよりー』
会期=2009年6月27日(土)〜7月20日(月)
会場=E&Cギャラリー
〒910-0006 福井市中央1-20-25 三井ビル3F
電話:0776-27-0207
www.eandcgallery.com
7月12日(日)15:00〜16:30 ギャラリートーク(綿貫不二夫)
参加費:500円(ドリンク付)
*要予約(定員30名、お申し込みは直接E&Cギャラリーへ)
福井の方、ぜひご参加ください、久しぶりにお目にかかれるのを楽しみにしています。
「時代に先駆け、今も生きる駒井哲郎」 綿貫不二夫
銅版画の詩人と謳われた画家の初期の名作[孤独な鳥]から代表作[からんどりえ]など20点による駒井哲郎展が開催されると聞き、再び現代美術の神話が福井から復活するのではないかとの予感に包まれている。
北荘画会を結成した土岡秀太郎は昭和初年に福井駅前にアルト会館をつくり、多くの作家を招き展覧会や講演会を開いた。彼らの前衛運動は日本の美術史に燦然と輝く記念碑である。創る側と受容・享受する側との相互作用がなければ豊かな美術文化は育たない。
土岡より二周り下の駒井は15歳から東京芸大の初めての版画専任教授として56歳の若さで亡くなるまで銅版画のパイオニアとして創作と教育、そして版画の普及に生涯を捧げた。今でこそ海外で活躍するアーティストは珍しくないが、60年前の日本は敗戦で国土は廃墟と化し人々は打ちひしがれていた。そのとき湯川秀樹のノーベル賞と水泳の古橋広之進の世界記録が人々を勇気づけたことはよく知られている。当時まだオリンピックには復帰できなかったが、1951年の第1回サンパウロ・ビエンナ−レに駒井は木版の棟方志功らと出品し、コロニー賞受賞という快挙を成し遂げ、国際社会に日本人が進出するきっかけをつくった。武力ではなく文化の力が世界の扉を開いた。
瀧口修造が顧問格の[実験工房]に山口勝弘、大辻清司、武満徹、湯浅譲二らと参加し、美
術と映像、音楽、文学が交叉するインターメディア作品を制作したのが1953年である。いかに時代に先駆けていたことか。現代美術の歴史は志水楠男の南画廊を抜きには語れないが、1956年その伝説の画廊の開廊記念展は駒井哲郎展だった。
銅版画の小さな世界にこめた駒井の夢と幻想は今でも多くの人々に影響を与えている。来年は生誕90周年である。(同展フライヤーより)
前日まで「銀塩写真の魅力」展を開催していたもので、準備が慌しく、まだ値付けもしていないうちに次々と来廊者が相次ぎ、てんてこ舞でした。
ちょっと意外だったのは若い人たちが多かったことです。
私たちの仕事は、作家の創ったものが次の世代に引き継がれることをお手伝いすることですが、私どものような古色蒼然とした画廊に若い人たちが来られることは何だかとても嬉しい。
突然話は変わりますが、福井県は私たちにとって非常に大切な場所です。
現代版画センター以来のお客様が多数いらっしゃって、今まで何十回も訪れました。
福井が全国でも有数の現代美術の発信地であることは、ふるくは大正時代、土岡秀太郎さんが北荘画会を結成して以来、多くの前衛作家たちが福井を訪れていることでも明らかです。戦後の1950〜60年代には久保貞次郎先生の影響で創美運動が熱気をもって展開され、鯖江の木水育男さんを中心に、福井、大野、勝山などの人たちが頒布会を組織して晩年の瑛九を支えたことは余りにも有名です。
先日、もう30数年のお付き合いになるAさんから下記のようなメールが入りました。
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さて、4月に福井市にオープンしたE&Cギャラリーの3回目の企画展として「駒井哲郎版画展」を開催する運びになりました。期間は6月27日より1か月です。
このギャラリーは福井大学の美術の先生方が中心となり、福井での芸術文化の発信の場とするもので、NPO法人としての運営です。学生たちがギャラリーの運営を担っている、ユニークな画廊です。詳細はWEBサイトで見てください。オープニング企画は「宇佐美圭司展」でした。
つきましては、綿貫さんには急なお願いで申し訳ありませんが、ギャラリー発行のニュースレター、および駒井展の案内ちらし用として駒井哲郎の現代版画・現代美術における位置づけ、また、駒井版画の魅力について600字程度(少し増えても問題ないと思いますが)でまとめていただき、今週中にメールいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
出品作品については小生のコレクション20点で構成することになりました。
出品作品リストを添付しておきますので、ご参考に願います。
また、ギャラリートークもやろうと(中略)、小生ももちろん参加しますが、だれか熱く語れる人がいないかと考えますと、綿貫さんにぜひと考えた次第です。(以下略)
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とまあそんなわけで、セールの準備や何やかやでてんてこ舞の毎日だったのですが、古いお客さまのリクエストとあらば何とかせねば。
原稿を書いて送り、例によっておっちょこちょいにもギャラリートークまで引き受けてしまいました。
『駒井哲郎版画展ーA氏コレクションよりー』
会期=2009年6月27日(土)〜7月20日(月)
会場=E&Cギャラリー
〒910-0006 福井市中央1-20-25 三井ビル3F
電話:0776-27-0207
www.eandcgallery.com
7月12日(日)15:00〜16:30 ギャラリートーク(綿貫不二夫)
参加費:500円(ドリンク付)
*要予約(定員30名、お申し込みは直接E&Cギャラリーへ)
福井の方、ぜひご参加ください、久しぶりにお目にかかれるのを楽しみにしています。
「時代に先駆け、今も生きる駒井哲郎」 綿貫不二夫
銅版画の詩人と謳われた画家の初期の名作[孤独な鳥]から代表作[からんどりえ]など20点による駒井哲郎展が開催されると聞き、再び現代美術の神話が福井から復活するのではないかとの予感に包まれている。
北荘画会を結成した土岡秀太郎は昭和初年に福井駅前にアルト会館をつくり、多くの作家を招き展覧会や講演会を開いた。彼らの前衛運動は日本の美術史に燦然と輝く記念碑である。創る側と受容・享受する側との相互作用がなければ豊かな美術文化は育たない。
土岡より二周り下の駒井は15歳から東京芸大の初めての版画専任教授として56歳の若さで亡くなるまで銅版画のパイオニアとして創作と教育、そして版画の普及に生涯を捧げた。今でこそ海外で活躍するアーティストは珍しくないが、60年前の日本は敗戦で国土は廃墟と化し人々は打ちひしがれていた。そのとき湯川秀樹のノーベル賞と水泳の古橋広之進の世界記録が人々を勇気づけたことはよく知られている。当時まだオリンピックには復帰できなかったが、1951年の第1回サンパウロ・ビエンナ−レに駒井は木版の棟方志功らと出品し、コロニー賞受賞という快挙を成し遂げ、国際社会に日本人が進出するきっかけをつくった。武力ではなく文化の力が世界の扉を開いた。
瀧口修造が顧問格の[実験工房]に山口勝弘、大辻清司、武満徹、湯浅譲二らと参加し、美
術と映像、音楽、文学が交叉するインターメディア作品を制作したのが1953年である。いかに時代に先駆けていたことか。現代美術の歴史は志水楠男の南画廊を抜きには語れないが、1956年その伝説の画廊の開廊記念展は駒井哲郎展だった。
銅版画の小さな世界にこめた駒井の夢と幻想は今でも多くの人々に影響を与えている。来年は生誕90周年である。(同展フライヤーより)