「双葉」と「斬られた首」
前回、驚きの初期木版画の発掘についてご報告しました。あれ以降、いろいろ判明したこともあるのですが、日々の雑事に追われてしまい、この連載もすっかり間が空いてしまいました。
木版画についてはもう少し追求してからとして、今回はちょっとくだけたというか、駒井作品に特有の「タイトル変更」について、書いてみましょう。
私たちは駒井哲郎作品を追いかけているので、いつも知り合いの画商さんたちに声をかけておき「珍しいものがあったら知らせて」とお願いしています。
先日も「双葉」という作品の情報がもたらされました。
「双葉?」聞いたことないなあ、もしかしたら新発見かと期待したのですが、入ってきたのは駒井ファンならよくご存知の<からんどりえ>の中の一点でした。
安東次男との詩画集で<人それを呼んで反歌という>とともに駒井作品の代表作といっていいでしょう。
先ずは、その実物をご紹介しましょう。
駒井哲郎「<からんどりえ>フロントピース Mai 斬られた首」
*本作品画面中央下には「Feuillage」との記載あり
1960年 銅版
イメージサイズ:30.0×24.8cm
紙サイズ:45.3×38.3cm
Ed.37(他にEA,及び別刷りあり)、本作品はEd.9(2/9)
サイン有り
*レゾネNo.124(美術出版社)、都美カタログNo.123
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
この作品は、レゾネに明記されている通り、<からんどりえ>のフロントピースとして制作されたもので「Mai 斬られた首」という、いささか物騒なタイトルがついています。
この連載の第11回や他の連載でも書いた通り、駒井先生はしばしばセカンド・エディションや、別バージョンを刷られました。そのたびに当初のものとは違ったタイトル(作品名)をつけることもしばしばでした。
ですから、いくつもの限定部数や、複数のタイトルが存在し、いったいその作品が「どういうタイトルで、全部でどのくらい刷られたか」という問題がコレクターや研究者にとっては悩みの種となっています。
ファースト・エディションの詩画集「からんどりえ」では、「Mai 斬られた首」というタイトルがつけられたものの、それを後にセカンド・エディション(増し刷り)するときに、駒井先生、ちょっと考えてしまったのかも知れませんね。
上の画像でお分かりの通り、セカンド・エディション(もしかしたらサード・エディションかも知れない)である本作品には限定番号が2/9と記載され、画面中央に駒井先生の自筆で「Feuillage」と当初のものとは異なるタイトルが記載されています。
手許のジュネス仏和辞典(大修館)でひくと、(1)葉の茂り、葉叢(はむら)(2)葉つきの小枝、とあります。
「双葉」という訳が正しいのかよくわかりませんが、セカンド・エディションの直接的目的が、売り切れてしまった作品を増し刷りして再び販売することにあったとすれば、そのタイトルは「Mai 斬られた首」より「Feuillage」の方が売りやすい、そう考えてしまうのは画商の不純な思いつきでしょうか・・・
前回、驚きの初期木版画の発掘についてご報告しました。あれ以降、いろいろ判明したこともあるのですが、日々の雑事に追われてしまい、この連載もすっかり間が空いてしまいました。
木版画についてはもう少し追求してからとして、今回はちょっとくだけたというか、駒井作品に特有の「タイトル変更」について、書いてみましょう。
私たちは駒井哲郎作品を追いかけているので、いつも知り合いの画商さんたちに声をかけておき「珍しいものがあったら知らせて」とお願いしています。
先日も「双葉」という作品の情報がもたらされました。
「双葉?」聞いたことないなあ、もしかしたら新発見かと期待したのですが、入ってきたのは駒井ファンならよくご存知の<からんどりえ>の中の一点でした。
安東次男との詩画集で<人それを呼んで反歌という>とともに駒井作品の代表作といっていいでしょう。
先ずは、その実物をご紹介しましょう。
駒井哲郎「<からんどりえ>フロントピース Mai 斬られた首」
*本作品画面中央下には「Feuillage」との記載あり
1960年 銅版
イメージサイズ:30.0×24.8cm
紙サイズ:45.3×38.3cm
Ed.37(他にEA,及び別刷りあり)、本作品はEd.9(2/9)
サイン有り
*レゾネNo.124(美術出版社)、都美カタログNo.123
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この作品は、レゾネに明記されている通り、<からんどりえ>のフロントピースとして制作されたもので「Mai 斬られた首」という、いささか物騒なタイトルがついています。
この連載の第11回や他の連載でも書いた通り、駒井先生はしばしばセカンド・エディションや、別バージョンを刷られました。そのたびに当初のものとは違ったタイトル(作品名)をつけることもしばしばでした。
ですから、いくつもの限定部数や、複数のタイトルが存在し、いったいその作品が「どういうタイトルで、全部でどのくらい刷られたか」という問題がコレクターや研究者にとっては悩みの種となっています。
ファースト・エディションの詩画集「からんどりえ」では、「Mai 斬られた首」というタイトルがつけられたものの、それを後にセカンド・エディション(増し刷り)するときに、駒井先生、ちょっと考えてしまったのかも知れませんね。
上の画像でお分かりの通り、セカンド・エディション(もしかしたらサード・エディションかも知れない)である本作品には限定番号が2/9と記載され、画面中央に駒井先生の自筆で「Feuillage」と当初のものとは異なるタイトルが記載されています。
手許のジュネス仏和辞典(大修館)でひくと、(1)葉の茂り、葉叢(はむら)(2)葉つきの小枝、とあります。
「双葉」という訳が正しいのかよくわかりませんが、セカンド・エディションの直接的目的が、売り切れてしまった作品を増し刷りして再び販売することにあったとすれば、そのタイトルは「Mai 斬られた首」より「Feuillage」の方が売りやすい、そう考えてしまうのは画商の不純な思いつきでしょうか・・・