中島秀雄のエッセイ「銀塩写真の魅力 ゾーンシステムを巡って」 第5回 2009年6月24日 |
アダムスによるとビジュアライズは、ファインプリント制作のための必要条件としている。この考え方は特別なことではなく、ただ、日本の写真教育の中では大きく扱われてこなかった。私達は、撮影に露出計を使う。しかし、どの露出計にも数値が並んでいるだけで視覚に訴える表示は他に何もない。この露出計で様々な被写体の輝度から平均値を捉え、露出のキーを決定し撮影を終える。これではビジュアライズ(想定、予知)は難しい。アダムスのゾーンメーターには小さなゾーンスケールが貼られ、被写体とゾーンの関係が分かるようになっている。メーターの露出マーク(▲)のところがゾーンXとなり、そこからプラス側にY、Z、[、\、マイナス側にW、V、U、Tと一絞り差のゾーンが並んでいる。
メーターを被写体に向け、仮につぶしたくない暗部がメーターにEV8と出たとしてそれをゾーンVに位置付けると中間部はゾーンX〜Y(EV10-11)となる。次に、必要な明部がEV13と出てそれがゾーン[を指していれば、つぶれない黒、飛ばない白、中間部を含め豊かなゾーンのプリントになることがその場で分かる。これがビジュアライズです。そのときに組み合った露出のキー(仮にISO100、絞りf8 1/15秒)で撮影すればバランスのとれたネガとなり、プリントも容易になる。つまり、被写体の重要な暗部はどこか、飛ばしたくない明部はどのくらいか、全体に印画紙の再現域の中にあるのか、もし印画紙の再現域を超えてしまう強い光なら柔らかな光になるまで待つか、そのまま撮影してフィルムの現像時間を減らせば(マイナス現像)よいこともその場で確認できるのです。 ゾーンシステムは、被写体をゾーンとして捉えることでビジュアライズが可能となり、その後の露出、ネガ作り、プリントまで流れを明快にしてくれる理にかなった方法と言えるのです。しかし、ゾーンシステムは写真制作のための一つの技法であり、これを使ってどのような写真を撮るかは1人1人の中にあることはいうまでもありません。 (なかじま ひでお) ■中島秀雄 Hideo NAKAJIMA 1947年神奈川県生まれ。1968年東京写真大学(現・東京工芸大学)卒業。写真家細江英公の助手を経て1977年独立しフリーとなる。 1986年アメリカ・バーモント州 "ゾーンYワークショップ" に参加。1995年"ゾーンシステム研究会" を設立・代表。 公式サイトゾーンシステム研究会 http://hw001.spaaqs.ne.jp/zonesystem/ 「中島秀雄のエッセイ」バックナンバー 中島秀雄のページへ |
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