ときの忘れもの 今月のお勧め
■2010年01月30日(土)  デイヴィッド・ホックニー「Eastern China Tombs」
hockney_01_eastern-china_tombs.jpg 600×445 174Kデイヴィッド・ホックニー
「Eastern China Tombs」
1981年
Type-C Print
15.2×20.3cm
サインあり

今回のお薦め写真は、デイヴィッド・ホックニーの「Eastern China Tombs」という中国を撮った作品です。
ホックニーは、イギリスのポップアートの画家としてスタートし、後にアメリカに移って、プールで泳ぐ人の連作などの、明るいが何か空虚な「日常の非日常性」ともいえる作品を描いてきましたが、並行して写真家としても作品を発表し続けてきました。
1967年、友人や身の回りのことを写真に撮りためたものから、1冊のアルバムを作ったことが契機となって本格的に写真を撮り始め、1976年には写真による初個展を開催しています。ホックニーの写真で特に知られているのは、1982年に初めて発表された「ジョイナー・フォト」と呼ばれる、ポラロイドや写真を何枚も組み合わせてひとつの画像を形成した作品群です。これは、彼の「絵画は筆の運びなど時間をかけて見るべきものあるが、写真は30秒以上見ていることができない」という自分の言葉から作ったもので、作品を構成する1枚1枚の写真の中に違った時間が存在し、違ったアングルがあり、作品を見るものはそれら1枚1枚を見ることを強いられることになります。ホックニーは、この「ジョイナーフォト」で80年代のアート写真をリードしました。
今回ご紹介する「Eastern China Tombs」は、ホックニーが「ジョイナーフォト」を発表する前年の1981年に中国を訪れた時に撮影された作品です。三本の画面を横切る斜めの線と二人の人物の作り出す画面のリズムが面白く、ユーモラスな作品になっています。

デイヴィッド・ホックニー David HOCKNEY(1937-)
1937年イギリスのブラッドフォード生まれの画家。ブラッドフォード美術学校、王立美術学校で学ぶ。この頃、ピカソの影響を受ける。1963年ロンドンで初個展。1964年ロサンゼルスに移り、当時まだ新しい画材であったアクリルで制作を始める。また、インスタントカメラによる撮影を始める。いくつかの学校で教えた後、1968年ロンドンに移り住んだ。1970年「ジョイナーフォト」を初めて制作。1976年ロサンゼルスに戻る。1981年中国を旅行。1982-84年ポラロイドや写真で初めてコラージュ作品を制作する。1986年にはコピー機を使って「ホームメイドプリント」を、1989年にはFAXを使った作品を制作するなど新しいメディアを利用した作品を次々と発表する一方、オペラの衣装や舞台装置なども手がけた。1995年ヴェネチア・ビエンナーレに出品。ヨーロッパ絵画のオールドマスターたちの技法を研究し、2001年『秘密の知識−巨匠も用いた知られざる技術の解明−』(翻訳:木下哲夫)を発表。

■2010年01月20日(水)  ル・コルビュジエ『ユニテ』より
grp0120130254.JPG 448×600 64Kル・コルビュジエ
『ユニテ』より11
1965年
銅版
57.5×45.0cm
Ed.130
版上サインあり

優れた建築家は、イコール優れた画家であるというのが、私たちの考えですが、ル・コルビュジエはその典型でしょう。
「自分の建築は絵画という運河を通って来た」と、コルビュジエ自身述べています。 多くの油彩、彫刻の他にも版画にも取り組み、代表作には連作「ユニテ」(銅版)、「直角の詩」(リトグラフ)があります。
1920年代、ピュリズムの画家としてパリの画壇にデビューしたル・コルビュジエは当初は、物体の幾何学的な美しさと調和のとれた構図の中で描いていましたが、やがてうねるような曲線を用い、豊満で重量感溢れる力強い女性を描くようになります。さらに第2次世界大戦後には、象徴的なモチーフを彫刻やタペストリーなどで表現することも始めました。
晩年にはよりグラフィカルで大胆、色面と描線が自由に踊るような作品を制作するようになり、最後の連作「ユニテ」でその表現が頂点に達しました。

ル・コルビュジエ Le Corbusier(1887-1965)
建築家。1887年スイスのジュラ地方ラ・ショー・ド・ファン生まれ。本名シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ。1906年初めての住宅[ファレ邸]を設計。1917年パリに出るが、翌年左目を失明する。『エスプリ・ヌーボー』の創刊に関わり、美術運動にも参加。1922年建築事務所設立。代表作[サヴォア邸][ロンシャン礼拝堂][ラ・トゥーレット修道院][国立西洋美術館]他。1965年水泳中にカプ・マルタンで死去(78歳)。

■2010年01月10日(日)  クリス・ジョンソン「ROB KAME」
nicky_20100110.jpg 482×600 62Kクリス・ジョンソン
「ROB KAME」
1977年
ゼラチンシルバープリント
17.7×14.1cm
サインあり

この作品は、モノクロームのポートレイトのシリーズからの1点です。暗い背景の中に浮かび上がる上半身裸の男性。後ろの壁にはかしいだ写真の額。男性の左手に画面右側から伸びた手は、やはり男性の手に見えます。何ということはない写真ですが、壁の額といい、白い花瓶の白い花といい、周到な暗室での作業を感じさせ、また、不思議な物語性を持った写真です。

クリス・ジョンソン Chris JHONSON(1948-)
1948年ニューヨークのブルックリン生まれ。アンセル・アダムス、イモージン・カニンガム、ウィン・バロックに写真を学び、ゾーンシステムの研究書である「Practical Zone System」の著者として知られている。また、さまざまなプロジェクトのリーダー、キュレーターとして活動し、1977年には日本で開催された「イモージン・カニンガム展」のキュレーションも行った。現在は、カリフォルニア芸術大学の教授として写真を教えている。主なパブリックコレクションにスミソニアン博物館、サンフランシスコ現代美術館、オークランド美術館など。

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