■2012年07月20日(金)
百瀬寿 「Square lame' - G, Y, R, V around White」
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| 百瀬寿 「Square lame' - G, Y, R, V around White」 2009年 42.5x42.5cm Ed.90 サインあり
先日、名人刷り師・石田了一さんが来廊され「根室へお墓参りに行った帰路、久しぶりに盛岡に寄って直利庵で蕎麦を食ってきた」と亭主が悔しがるようなことをおっしゃる。ついでに「これお土産ね」と、地元紙岩手日報を届けてくれました。 その内容のご説明は後ほどにして、盛岡ゆかりの作家は実に多い。 ときの忘れもので扱っている作家だけでも、小野隆生はじめ、松本竣介、舟越保武、舟越桂、舟越直木、戸村茂樹、萬鉄五郎などなど。
そして百瀬寿。 亭主が百瀬寿の色面だけで構成された世界に初めて触れたのは1974年頃、盛岡でのことでした。 大きな画廊の壁面に並ぶ色面だけの版画作品について、画廊主の上田浩司さんは「版の無い版画だよ」と教えてくれたのですが、銅版や木版の<刀で刻む>版画こそ版画であるとの固定観念に囚われていた亭主にはよくわかりませんでした。 北海道生まれの百瀬さんが岩手大学(ガンダイ)に学んだことがきっかけで盛岡に移り住み、シルクスクリーンによる版画の制作を手掛けて、いわゆる従来の版の概念から開放された自在な色面による自身のスタイルを確立された頃でした。 その後は手漉き和紙や箔なども使い、キャンバス作品や立体作品にも意欲的に取り組んで大作を発表し続けています。 百瀬作品の魅力はなんと言ってもその色彩の美しさでしょう。
2010年9月11日〜11月23日には岩手県立美術館で大規模な回顧展が開催され、亭主も社長とともにかけつけ、百瀬さんの首尾一貫した色彩世界を俯瞰することができました。 色彩同士が奏でるハーモニーが調和よくスクエアの画面いっぱいに漲り、そこに柔らかな光があてられると強烈な色を使っているにも関わらずすがすがしいまでの光の世界が現出します。 百瀬寿の名前は知らなくとも、東京ミッドタウンや横浜美術館のグランドギャラリーに常設展示されている大きな作品を見た方は多いはず。
◆百瀬寿 Hisashi MOMOSE(1944-) 1944年北海道・札幌市生まれ。北海道教育大学旭川分校卒業、岩手大学専攻科修了。シルクスクリーンやネコ・プリントの技法によって、美しい色彩の版画作品を手がける。80年代以降、和紙や箔などを用いた平面作品を制作、色彩のうつろう鮮やかな絵画世界を確立。オレンジからグリーンへ、イエローからピンクへなどグラデーションによる作品構成が特徴である。 作品は神奈川県立近代美術館やスコットランド王立美術館など、国内外の多数の近代美術館に収蔵されている。また2007年に東京ミッドタウンに設置されたパブリックアートワークも話題となった。 | | |