■2010年09月20日(月)
アンドレ・ケルテス「Fan, December, 1937」
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| アンドレ・ケルテス 「Fan, December, 1937」 1937年撮影(1973年プリント) ゼラチンシルバープリント 23.0×19.6cm Ed.50 サインあり
ハンガリー生まれのアンドレ・ケルテスは、1925年、21歳のときにパリへ移り住みました。時あたかもシュルレアリスムや、キュビスムが大きな潮流としてあり、また、後にエコール・ド・パリと呼ばれることになったフランス国外からの芸術家たちが活躍していた時代でした。そのような中にあって、ケルテスはどのグループにも属することなく、自分のスタイルで写真を撮り続けました。 ケルテスの作品からは、巧まずしてにじみ出る叙情性が感じられ、その完璧な構図とともにブレッソンやブラッサイらに多大な影響を与えました。卓越した画面構成の直観と被写体への人間的共感に、モダンの精神が集約されている作品は高い評価を得います。 「換気扇」は1937年にニューヨークで撮影された作品ですが、私たちにとっては思わず岡本太郎の「傷ましき腕」を想起させるイメージです。 岡本の作品はパリで1936年に制作されたもので、ケルテスより一年前、偶然でしょうが何か時代の因縁を感じます。もっとも岡本の作品は戦災により焼失し、私たちが見ているのは戦後1949年に再制作されたものです。
◆アンドレ・ケルテス Andre KERTESZ(1894-1985) 1894年、ハンガリーのブダペスト生まれ。独学で写真を学びフリーランスで活動。1925年パリに移住し、フランス、ドイツの多くの雑誌,新聞の写真を撮る。1920年代から30年代のパリの前衛芸術家の多くと交流し、その肖像を手がける。1925年発売のライカを積極的に使い,手持ちカメラの分野でもパイオニア的存在。 1930年頃から凹面鏡上の反射映像を写した《ディストーション(歪曲)》のシリーズを撮る。1936年アメリカに移住。1964年ニューヨーク近代美術館で個展。卓越した画面構成の直観と被写体への人間的共感に、モダンの精神が集約されている。1985年歿。
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