ときの忘れもの 今月のお勧め
■2010年09月30日(木)  マン・レイ「メレット・オッペンハイム」
nicky_20100930.jpg 448×600 63Kマン・レイ
「メレット・オッペンハイム」
1933年(Printed later)
ゼラチンシルバープリント
29.8×22.2cm
裏面にスタンプあり

今週のお勧めはマン・レイの「メレット・オッペンハイム」です。
この水泳帽をかぶったオッペンハイムのシリーズは他にもあり、2002年にBUNKAMURAなどで開催された展覧会カタログにも6点掲載されています。ただそのうちの4点は2組の「オリジナルとトリミング後」なので種類としては4種です。これら以外に別の写真集に2種類出ているので、少なくとも6種類あるわけですが、今回の出品作品は写真集に掲載されているのを見たことがありません。他の写真に比べるとオッペンハイムが冷たい表情をしていますが、20歳とは思えない妖艶さを漂わせています。リー・ミラーに去られた後、20歳以上の年齢差のあるオッペンハイムにその癒しを求めたのでしょうか。
作品の裏には「MAN RAY PARIS」のスタンプの他に「E.A.」と鉛筆で書かれています。普通は、作家所蔵用の意味ですが、もし、その通りなら、マン・レイ生前のプリントということになります。本当にマン・レイの作品はいろいろな意味で楽しむことが出来ます。

マン・レイ Man Ray(1890-1976)
アメリカ合衆国の画家、彫刻家、写真家。ダダイストまたはシュルレアリストとして、多数のオブジェを制作したことでも知られる。
レイヨグラフ、ソラリゼーションなど、さまざまな技法を駆使し、一方でストレートなポートレート(特に同時代の芸術家のポートレート)も得意とし、ファッション写真と呼べるような作品もあったりと、多種多様な写真作品群を残している。

■2010年09月20日(月)  アンドレ・ケルテス「Fan, December, 1937」
nicky_20100920.jpg 494×600 100Kアンドレ・ケルテス
「Fan, December, 1937」
1937年撮影(1973年プリント)
ゼラチンシルバープリント
23.0×19.6cm
Ed.50
サインあり

ハンガリー生まれのアンドレ・ケルテスは、1925年、21歳のときにパリへ移り住みました。時あたかもシュルレアリスムや、キュビスムが大きな潮流としてあり、また、後にエコール・ド・パリと呼ばれることになったフランス国外からの芸術家たちが活躍していた時代でした。そのような中にあって、ケルテスはどのグループにも属することなく、自分のスタイルで写真を撮り続けました。
ケルテスの作品からは、巧まずしてにじみ出る叙情性が感じられ、その完璧な構図とともにブレッソンやブラッサイらに多大な影響を与えました。卓越した画面構成の直観と被写体への人間的共感に、モダンの精神が集約されている作品は高い評価を得います。
「換気扇」は1937年にニューヨークで撮影された作品ですが、私たちにとっては思わず岡本太郎の「傷ましき腕」を想起させるイメージです。
岡本の作品はパリで1936年に制作されたもので、ケルテスより一年前、偶然でしょうが何か時代の因縁を感じます。もっとも岡本の作品は戦災により焼失し、私たちが見ているのは戦後1949年に再制作されたものです。

アンドレ・ケルテス Andre KERTESZ(1894-1985)
1894年、ハンガリーのブダペスト生まれ。独学で写真を学びフリーランスで活動。1925年パリに移住し、フランス、ドイツの多くの雑誌,新聞の写真を撮る。1920年代から30年代のパリの前衛芸術家の多くと交流し、その肖像を手がける。1925年発売のライカを積極的に使い,手持ちカメラの分野でもパイオニア的存在。
1930年頃から凹面鏡上の反射映像を写した《ディストーション(歪曲)》のシリーズを撮る。1936年アメリカに移住。1964年ニューヨーク近代美術館で個展。卓越した画面構成の直観と被写体への人間的共感に、モダンの精神が集約されている。1985年歿。

■2010年09月10日(金)  尾形一郎 尾形優「Ultra Baroque Puebla」
nicky_20100910.jpg 475×600 132K尾形一郎 尾形優
「Ultra Baroque Puebla」
1994年
ヴィンテージ・ゼラチンシルバープリント
34.0×27.0cm
Ed.1
サインあり

2010年6月に写真展「ウルトラバロック」を開催し、ご好評をいただきました尾形一郎・尾形優さんのモノクロ作品をご紹介します。題材は同じ「ウルトラバロック」ですが、カラーとモノクロでは、色がない分、見る者は物体としての建築物によりフォーカスして見ることになり、その量感やディテールを感じることができます。
この作品は、1994年にプリントされたヴィンテージで、作家自身によるプリントです。このシリーズの発表当時はエディションを25に想定していたのですが、実際には数点プリントしたのみでした。現在もう同じクオリティでの焼き増しは出来ないので、モノクロプリントは、現物のみです。そのため、「Puebra」はEd.1となっております。

尾形一郎(小野一郎) ICHIRO OGATA ONO(1960-)
1960年京都府生まれ。主な写真集に「ウルトラバロック」(新潮社)、「HOUSE」(フォイル)、著書に「極彩色メキシコ巡礼」(晶文社)などがある。2009年フォイルギャラリーで個展を行う。

尾形優 Yu OGATA(1964-)
1964年東京都生まれ。1987年早稲田大学理工学部建築学科卒業。一級建築士事務所タイルの家主宰。代表作に「タイルの家」、「フォトハウス」などがある。

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