ときの忘れもの 今月のお勧め
■2011年02月20日(日)  瑛九「フォトデッサン型紙コレクションより No.6」
nicky_20110220.jpg 338×600 42K瑛九
「フォトデッサン型紙コレクションより No.6」
12.6×4.7cm
Ed.1

今週は、瑛九がフォトデッサンを制作するに際して使った(作った)型紙をご紹介します。
良く知られている通り瑛九の造語である「フォトデッサン」は、先行するマン・レイやモホリ=ナギが印画紙の上に物を置き、直接光をあてて制作した「フォトグラム(レイヨグラム)」と同じ技法です。印画紙に直接光をあてて描くことに自らの進むべき道を見出した若き日の瑛九の自負をうかがわせる「フォトデッサン」という言葉ですが、マン・レイたち先行者と異なるのは、瑛九が自らが切り抜いた「型紙」を使って膨大な点数を制作したことでしょう。それが絵画性の強い独創的なものであったことは遺された作品群を見れば一目瞭然です。
瑛九が「型紙」に使ったのは、文字通り普通の「紙」の場合もありましたし、「セロファン」を使ったものもあります。
驚くべきことは、一度は完成させたフォトデッサン(印画紙)を次の作品をつくるために「型紙」として切り抜いてしまったものが多数存在することです。従来は、「フォトデッサン」の失敗作を「型紙」に転用したと言われてきましたが、ときの忘れものが入手した49点からなる「フォトデッサン型紙コレクション」の中には、ちゃんとした瑛九自筆のサインや年記が記入されているものも少なくありません。
失敗作などではなく、完成作品を惜しげもなく、切り抜いてしまったのはどういう意図だったのでしょうか。それら型紙に鉛筆で下書きされた線や切り抜いたライン、瑛九の手の痕跡が感じられます。
当初は「型紙」として使われたものが、こうして時代を経てみると、独立した作品としてチャーミングな雰囲気すら漂わせていることに驚きます。

瑛九 Q-Ei(1911-1960)
1911年宮崎生まれ。本名・杉田秀夫。15歳で『アトリヱ』『みづゑ』など美術雑誌に評論を執筆。36年フォトデッサン作品集『眠りの理由』を刊行。37年自由美術家協会創立に参加。既成の画壇や公募団体を批判し、51年デモクラート美術家協会を創立。靉嘔、池田満寿夫、磯辺行久、河原温、細江英公ら若い作家たちに大きな影響を与えた。油彩、フォトデッサン、版画などに挑み、独自の世界を生み出す。60年48歳で永逝。

■2011年02月10日(木)  エドワード・スタイケン「Apple Blossoms, Connecticut」
nicky_20110210.jpg 472×600 105Kエドワード・スタイケン
「Apple Blossoms, Connecticut」
1932年(1987年プリント)
ゼラチンシルバープリント
33.4×26.4cm
Ed.100
裏にプリンターと遺族のサインあり

今週のお勧めはエドワード・スタイケンの「Apple Blossoms, Connecticut」です。
自然を愛したスタイケンは、自らコネチカット州に農園を持って、飛燕草などを栽培していました。コネチカットのオーデュボンにある、野草保護園には「エドワード・スタイケン記念」という名前が冠せられています。
この作品は、そのコネチカットで撮影されたりんごの花です。青空をバックに白い花が枝を飾っているひじょうに愛らしい写真です。この作品は、ボストン美術館やニューヨーク近代美術館にも収蔵されています。

エドワード・スタイケン Edward STEICHEN(1879-1973)
1879年ルクセンブルグに生まれる。1881年アメリカに移住。1899年初個展開催。1900年ニューヨークでアルフレッド・スティーグリッツに会い、活動を支援する。1902年季刊誌『カメラ・ワーク』を創刊に参加。1905年スティーグリッツと共にニューヨーク五番街291に「リトル・ギャラリー・オブ・フォトセクション」設立し、ピクトリアリズムからストレート写真へのムーブメントを起こす。1906年フランスへ。ロダン、マティス、ブランクーシらヨーロッパの芸術家たちとも交流をもち、彼らのポートレイトを撮影。1923年スタジオをニューヨークのボークス・アーツ・ビルディングに置く。
同年ヴォーグ誌などを発行しているコンデ・ナスト社のチーフフォトグラファーになり、 アート性を持った斬新なファッション写真のスタイルを確立する。1929年『スタイケン・ザ・フォトグラフィー』を出版。1947年ニューヨーク近代美術館(MoMA)写真部門のディレクターに就任。1955年「ザ・ファミリー・オブ・マン」開催。1961年回顧展「スタイケン・ザ・フォトグラファー」開催。1962年ニューヨーク近代美術館名誉ディレクターとなる。1964年MoMAにエドワード・スタイケン・フォトグラフィー・センター開設。1973年死去。

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