■2011年07月20日(水)
マン・レイ「贈り物」
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| マン・レイ 「贈り物」 1921年/1974年 マルチプル H16.5×10.0×8.2cm Ed.5000 作品証明カードにサインあり
今週のお勧めは、マン・レイ「贈り物」です。 マン・レイの自伝を読むと、生涯において夥しい数を制作したオブジェについて次のように書かれています。 <ある日、ブルトン、エリュアール、アラゴンがわたしの絵を見に来た。スーポーが画廊を開く計画をたてていて、わたしがかわきりの展覧会をやってもよいというのだった。三十点の奇体な作品がホテルの部屋から画廊まで運ばれた。 〈略〉 キャフェを出て、いろいろな家庭用品を店頭にひろげた店のまえを通りかかった。わたしは石炭ストーヴで熱して使う型のアイロンを取上げて、サティーに言って一緒に中に入り、彼に手伝ってもらって、鋲を一箱と膠を一本買った。画廊に戻って、アイロンのなめらかな面に鋲を一列、膠でくっつけ、《贈物》という題を付けて、展示物に追加した。これがパリでのわたしの最初のダダのオブジェであり、ニューヨークで作っていたアッセンブリッジの作品と同類のものだった。この作品を賞品にして友人たちに籤引をやってもらおうとおもっていたのだが、午後のあいだに失くなってしまった。きっとスーポーがねこばばしたにちがいないとおもった。展示は二週間続いたが、ひとつも売れなかった。わたしは狂乱にとらわれんばかりだったけれど、有名な画家たちだって認められるまで何年も闘ったのだと考えて気を鎮めることにした。それに、わたしには頼るべきものとして写真があった。> 『マン・レイ自伝 セルフポートレイト』1981年 千葉成夫訳 美術公論社 118〜121ページより引用
マン・レイのファンなら誰でも知っているアイロンのオブジェが、パリでの最初のオブジェだったこと、オリジナルは直ぐに失われてしまったこと、などがわかります。 マン・レイはその後も幾度もアイロンのオブジェを制作します。 単なる再制作とはいえない、マン・レイの制作への姿勢が伺えます。
◆マン・レイ Man Ray(1890-1976) 1890年8月27日〜1976年11月18日。はアメリカ合衆国の画家、彫刻家、写真家。ダダイストまたはシュルレアリストとして、多数のオブジェを制作したことでも知られる。 レイヨグラフ、ソラリゼーションなど、さまざまな技法を駆使し、一方でストレートなポートレート(特に同時代の芸術家のポートレート)も得意とし、ファッション写真と呼べるような作品もあったりと、多種多様な写真作品群を残している。 | | |