■2010年11月10日(水)
ルイス・キャロル「Dorothy Kitchen」
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| ルイス・キャロル 「Dorothy Kitchen」 1879年(Printed later) ゼラチンシルバープリント 15.0×12.8cm
今週のお勧めは、ルイス・キャロルの作品です。 この写真を撮ったのはルイス・キャロル、言わずと知れた「不思議の国のアリス」の作者です。キャロルが少女の写真を多く撮影していたのもまた有名な話ですが、ロリータ・コンプレックスであったという俗説は今では否定されているようです。彼は、1856年にカメラ一式を購入し、1880年に写真を止めるまで、自ら写真館を経営するなど3,000枚におよぶ写真を撮影(そのうち約1,000枚が現存)した立派な写真家でもありました。アリス・リデルやアレクサンドラ(エクシー)・キッチンらの少女モデルを長期に亘って撮影したほか、ジョン・エヴァレット・ミレーやダンテ・ゲイブリエル・ロセッティなどの画家や上流社会の人たちのポートレートも撮影しています。 今回の出品作品の被写体となっているドロシー・キッチンは、エクシーの姉妹と言われています。握った両手や緊張した面持ちの様子は、ややもすると女装した男の子にも見えますが、その辺りは詳らかではありません。少女写真にも詳しい飯沢耕太郎さんもこの写真は初めて見たとおっしゃっていました。その意味では、かなり珍しい作品と言えるようです。
◆ルイス・キャロル Lewis CARROLL(1832-1898) 1832年、イギリス生まれ。本名チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン。数学者、論理学者、写真家、作家、詩人。『不思議の国のアリス』の著者として何より知られる。1850年オックスフォード大学のクライスト・チャーチへ入学。1854年に最優秀の成績で卒業した後、同校の数学講師としての仕事を得て、以降26年間に渡って続けた。在学中から物語や詩を執筆し匿名や筆名で多数の雑誌に寄稿していたが、1956年初めて「ルイス・キャロル」名義で『Solitude(孤独)』という作品を発表。同年、『不思議の国のアリス』のモデルとなるアリス・リデルとその姉妹に出会う。この頃より、当時の新しい芸術形式であった写真術に凝り始める。たちまち写真技術に習熟し、人物写真に傾倒するようになる。 1880年に唐突に写真術を止めてしまうまでに、約3000枚以上の写真を撮影。これらの写真のうち破損を免れた1000枚足らずが現存しており、その半分以上が少女を撮影したものである。またドジソンは彼個人の写真館を所有し、ジョン・エヴァレット・ミレーやダンテ・ゲイブリエル・ロセッティらの肖像写真や、風景写真、解剖写真の撮影も多く行なった。1898年、歿。 | | |